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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み7 〜Summer Vacation〜-6

 程よく焼けたチョリソーをかじり、溢れ出る肉汁を味わいながら龍之介は思った。
 ビールが飲みたい。
 いや、未成年だから飲んじゃいけないのは百も承知だが……五〜六年ばかり前から、子供だろうと大人だろうと飲まなければやっていられない状況というモノがあるのは身に染みているし、実際に未成熟な肝臓をアルコールへ曝してきたのである。
 美弥は普段飲まないが、特別な日には嗜んでくれる。
 だが今は、特別な日ではない。
 この六人の中で普段からアルコールに親しんでいそうなのは、瀬里奈と紘平くらいか。
 瀬里奈は元カレと高級ワインをがぱがぱ飲んでいたらしいし……紘平は台所のゴミ袋へカクテルやチューハイの缶を入れているのを、龍之介は目撃している。
 その二人も、今はアルコールに手を出していない。
 秋葉と輝里がアルコールに親しんでいたら、かなりの驚きだろうが。
 この六人だけでバーベキューを楽しんでいるのなら、龍之介は躊躇わずにビールへ手を伸ばしていた事だろう。
 だがこの場には、八人いるのだ。
 輝里のダンディな叔父さんと、ほわわんとした叔母さん。
 姪っ子とその友達へ『さあさあどんどん食べろ』とビール片手に次々食材を焼いてくれているこの二人の心証を損ねるのは、どう考えても得策ではない気がする。
 そんな理由で、龍之介は一人悶々としながら黙々とチョリソーをかじっていた。
「どうかしたの?」
 恋人のそんな様子を見た美弥は、マヨネーズを付けた人参スティックをかじりつつ龍之介にそう問う。
「ん、あぁ……黄色くて泡立ってて苦味があってキンキンに冷えた飲み物が欲しくって」
 ぱきっという音を響かせて、美弥は人参スティックをかじった。
「ビール?」
 ずばり言われて、龍之介は頷く。
「飲めばいいじゃない」
 あっけらかんとした美弥の言葉に、龍之介は驚いた。
「いや、あのね……」
 かじりかけの人参スティックを龍之介の手に預け、美弥は立ち上がる。
 そして、輝里の叔父さんの傍へ行って二言三言会話を交わした。
 美弥の話を聞いた叔父さんは快く頷き、氷水に突っ込んで冷やしていたビールを一缶その手に渡してくれる。
「はい」
 かじりかけの人参スティックと入れ代わりで、龍之介の手には缶ビールが握られた。
「いったいどうやって説得したわけ……?」
 龍之介の質問に、美弥は微笑みを浮かべる。
「秘密。早く飲まないと、ぬるくなっちゃうわよ?」
 龍之介は慌てて、缶のタブに指をかけた。
 
 プシュッ!
 
 小気味いい音と共に封印を解くと、待ち切れないといった様子で唇を当てる。
 ごくごくと、喉仏が動いた。
「……っぷあぁ!」
 泡ヒゲを手の甲で拭いながら、龍之介はこの世の極楽と言わんばかりの声を上げる。
「うーんめーっ!」
「よかった」
 美弥は微笑むと人参スティック最後の一片を口の中に放り込み、バーベキューをご馳走になろうと席を立った。
 
 
 さて、食事の後はお片付け。
 お片付けが済んだら、夕食の時間まではフリーである。
 滞在期間は明日の昼頃までで、その後は電車に乗らないと帰れなくなってしまうので、時間に余裕があるとは言い難い。
 とりあえず午後は海まで行って遊ぼうと話が纏まっているので、六人は叔父さんが貸してくれたビーチパラソルとクーラーボックスを手に浜までやってきた。
 夏休みが始まったばかりで時期的にまだ少し早いせいか、昼を過ぎているのに浜にはまだ余裕がある。
 男連中がビーチパラソルを組み立てている間に、女の子達は水着に着替えた。
 美弥はターコイズブルーの、大人しめなパレオ付きビキニ。


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