予行-2
そうして、瑞華は冷たい笑いとともに言う。
「じゃあ、練習よ。ちゃんと西永くんに心を込めた謝罪が伝わるようにね」
まずは原稿を手に、読み上げさせられる。
「ほら、声が小さい!」
みさきにとっては目で追うだけでも吐き気がするような文章なのだ。声に出して読むともなれば、それだけでもおぞましいことこの上ない。か細い声で口にするだけでも精一杯だ。声も震えている。
それに対して、瑞華たちから容赦のない叱咤が飛ぶ。みさきは仕方なく、懸命に声を振り絞ったが、さらなる罵声が浴びせられた。
「なにその気の抜けた棒読み。なんにも心がこもってないじゃないの!」
「そんなことで、西永くんに誠意が伝わると思ってるの?」
「表情がぜんぜん出来てない!」
本気で心を込めるなんてみさきにも出来るわけがない。だがこのままでは、いつまでも瑞華たちから解放されないこともはっきりしていた。
屈辱を噛み締めつつ、どうにか連中を満足させるように、声も表情も、作るしかなかった。
いったい、何度読まされたことだろう。
「まあ、ちょっとはサマになってきたみたいね。それでいいわ」
声もかすれそうになっていたところで、ようやく瑞華がOKを出した。
ようやく解放されるのかと思い、一息つきかけたみさきに、瑞華はにっこりと笑って言い渡す。
「明日は本番に向けてリハーサルにするけど、一度通しでやってみよっか」
それに従ってみさきは、下着姿にさせられた。
「ほんと、そんな女とも言えないようなカラダ見せたら、西永くんどう思うかな?」
嘲りの言葉を浴びつつ、その恰好で前半の謝罪文を読まなければならない。ただ読み上げるだけだったさっきの練習よりも、いっそう深い屈辱感に襲われる。そして、土下座までさせられる。
その上で、後半を読む段に入る前に、下着まで脱ぐことを強制される。
本番ではこんな姿をまたもや男の子の前に晒さなければいけないなんて、恥ずかしいにもほどがある。
しかもその姿で、自分を徹底的に貶めるような謝罪文を読まなければならないのだ。
リハーサルは一度だけで終わったが、みさきはもう、心身ともに徹底的にすり減らされていた。
「じゃあ、明日は原稿なしでやるから、ちゃんと覚えといてね」
そう告げられて、ともかくもこの日の辱めは終わった。