泳ぐ裸身-2
俯きながら、重い足取りで学校に向かう。このまま時間が止まってほしいとさえ思える。
学校の正門の前まで来たが、彼女は右手に逸れた。
瑞華に、北側の通用口から入るように言われていたからだ。校舎の入口から離れていて、普段の通学では誰も使わない。みさきは今まで知らなかったが、ここの鍵は長らく壊れたままで、いつでも出入りできるというのは生徒たちの間では知る人ぞ知ることだった。向かいは公園の木立であり、道を通りかかる人も少なく、ちょっと注意すれば出入りしても誰にも気づかれることはない。
そこから学校の敷地に入ると、プールと水泳部の部室はほど近い。
新東中では対外試合などの行事以外では日曜日の部活動は一切なく、土曜日も午前中しか認められていない。土曜の昼下がりになれば、校内にいるのは当直の教師ぐらいで、生徒はほとんど見かけなくなる。
学校でも辺境にあるここらで起きていることは、他の誰も知ることはないだろう。
そうして言われたとおりの時間に水泳部室に入ると、当然のように瑞華たちが待ち受けていた。
「やっぱり、ちゃんと来たね」
公江は水泳部の活動からそのままなのか、競泳水着姿だった。残る瑞華たちも学校指定のスク水を着ている。彼女らが全員みさきよりはるかに大人っぽく、豊かな肉体の持ち主であることはその姿なら歴然だった。
それだけでも気圧されそうなみさきに向けて、瑞華が口を開く。
「じゃあ、今日は一緒に泳ぐよ」
他の2人も頷いて、みさきのからだを見つめた。
「泳ぐって……水着なんて持ってきてません」
みさきは戸惑った。何もそんなふうに言われていなかったから当然だろう。だがそんな彼女に、瑞華は冷酷に言い放つ。
「あんたは裸で泳げばいいじゃない」
あまりに理不尽なことを命令され、みさきは唖然となった。これまでも瑞華たちの前で裸身を晒されたが、そればかりか全裸で泳がされるとなると恥ずかしさはさらに増す。
「ほら、早く脱ぐ」
固まったままのみさきに対して、瑞華は強圧的に促してくる。
みさきは思わず背を向けて逃げ出そうとしたが、公江がドアの前に立ちはだかり、行く手を塞いでいた。
「忘れたの? これは西永くんの心を弄び、あたしたちの想いを踏みにじったあんたに対する当然の罰なのよ。これぐらいで償えるわけがないけど、まずはちゃんと罰を受けてからの話だって」
「逃げようなんてしたから、これで罪も重くなったね」
無茶苦茶な言い分以外の何ものでもないが、自分たちの正義をまるで疑っていないこの面々に、何を言っても無駄なことはみさきもすでに承知していた。
「さあ、いいから脱ぎな」
スマホを彼女の眼前にちらつかせれば、それだけで十分意図は伝わった。弱みを完全に掌握している以上、もう力ずくで脱がせるまでもないのだ。
「はい……」
みさきは仕方なく、うなだれたままブラウスのボタンを外し始めた。スカートも取り、靴下も脱ぐと、残されたのはやはり白のブラジャーとパンティだけだ。
「せ、せめてこの格好で……」
そんなことをしたら下着がびしょ濡れになってしまうが、裸よりはまだましと、みさきは哀願した。
「ダメに決まってるじゃない。全部脱ぐのよ」
瑞華はまったく耳を貸さず、脱衣を促す。逆らいようもないみさきはおずおずとブラを、続けてパンティを取った。儚げな乳房と、パイパンのままの恥部が露わになる。
「貧乳でヘアも無いから、水の抵抗もないし泳ぐには都合いいでしょ?」
公江は皮肉たっぷりの言葉を浴びせてきた。
みさきは恥じらいに震え、手で胸と股間を隠そうとしたが、すぐに朝菜に引き剥がされた。
「じゃあ、行くよ」