純・潔・危・機-1
みさきは俯きながら、重い足どりであの場所に向かった。昼休みになったらすぐ来るように言われており、昼食の時間も与えられていない。だがあんなことを言われては、どのみち食事もろくに喉を通らないだろう。
水泳部室に入ると、昼食のパンやサンドイッチを頬張りながら、あの瑞華と公江が待ち受けていた。ほどなくして、呼び出した朝菜も入ってくる。
今度は何をされるかと怯えるみさきに向けて、サンドイッチの一つを食べ終えると瑞華が口を開く。
「あんた、少しは自分の罪を反省した?」
それは相変わらず、凄むような調子だった。
「反省なんて……どうして私があんな酷いことをされなきゃいけないんですか?」
とはいえ、一方的に断罪されて、みさきも納得できるわけがない。だがそれに対して、瑞華はフッと呆れたような息をつくと返す。
「そう。西永くんとあたしたちの気持ちを踏みにじったあんたの罪の重さ、まだ何もわかってないってことね。あれだけお仕置きを受けてもまだ口答えするなんて、ほんと恥知らずな女」
まるで独裁国家の裁判のような理不尽な裁きだ。みさきも、瑞華には何を言おうが通じないことを悟らざるを得なかった。彼女はいよいよ追い詰められた気分になる。
「で、あの時確かめるのを忘れてたことがあったけど」
そう言われるだけでも、みさきも不安の色を隠せない。そんな彼女に瑞華は問い詰める。
「あんた、処女なの?」
あまりにも露骨な質問を尋ねられ、みさきは顔を赤らめた。
「あ、あたりまえです!」
清純なみさきからすれば、中学生でそうでないなんて、想像もつかないことだった。今は亡き母親からの話と学校の性教育を通して、それ以外の情報源はほぼ皆無とはいえ、彼女も相応の性知識は持っている。とはいえセックスなんてずっと将来の話、大人になってからのことだと思っていた。
「ホントに? 西永くんを誘惑して弄ぶようなあばずれ女なんだから、とっくにやっちゃってたりしないの?」
だが瑞華は、ことさらに疑わしげな目で追及してくる。
「そんなこと、あるわけないです!」
「じゃあ、ちゃんと証拠を確かめさせてもらおうかな。嘘だったら承知しないよ」
純真なみさきには、瑞華が言うことの意味がすぐにはわからなかった。
「さあ、脱いで。パンツだけでいいからさ」
こんなふうに促されてようやく言わんとすることがわかり、途端にみさきは慄然となった。
瑞華は彼女の性器を直接調べて、膜の有無を確認するつもりなのだ。
「だめです……そ、そんな……恥ずかしいこと……」
女性として、いちばん見られたくない部分。この前全裸にされた時だって、そこまでは見られなかった。それを自分から晒さなければならないなんて、思春期の少女にはなおさら、死ぬほど恥ずかしいことだ。
みさきは思わず手でスカートを押さえるようにしながら、、後ずさりする。それに合わせるように、瑞華は威圧的な調子で詰め寄った。
「証拠を見せられないってことは、やっぱり処女じゃないってこと? だったら清純そうな顔をして実はヤリまくってる淫乱女って、この前の写真と一緒に学校中に触れ回っちゃうけど」
あまりにも無茶苦茶な決めつけとしか言いようがないが、聞く耳を持つような瑞華ではない。
「ち、違います!」
「じゃあ、ちゃんと証拠を見せてって」
瑞華にスマホを片手にここまで脅されると、みさきもついに観念するしかなかった。
「は、はい……」
みさきは白い頬を真っ赤に染め、スカートを履いたまま、震える手でパンティをおろす。片足ずつ抜いて、恥ずかしげに自分の後ろに置いた。まだスカートで隠れているが、下腹部がじかに空気に触れるだけでも緊張せずにはおれない。