傷心する少女-1
「ふっ、とりあえずこれぐらいにしとこっか」
恥辱に身をわななかせるみさきを憎々しげに見ながら、瑞華は告げた。
それを聞いた公江がようやく、羽交い絞めを解く。
みさきは力なく、床に崩れ落ちた。あやうく失禁しそうにさえなかった。呆然となり、裸のまま、しばらく何もできなかった。
「でも、西永くんの心を弄び、あたしたちの気持ちを踏みにじったあんたの罪は、これぐらいで償ったとは思わないことね」
何が罪なのよ……みさきには理不尽極まりない話だったが、辱めが今日のことで終わるわけではないことを仄めかされ、改めて空恐ろしくなる。
やっと脱がされた服を拾い、力ない手つきで身に着けはじめたみさきに対して、瑞華は念を押すように言う。
「わかってると思うけど、このことを誰かにチクったら、あんたの裸の写真、学校中にばら撒いてやる。ネットにもさらしてやるよ」
みさきは慄然となった。そんなことをされたら、もう女の子として終わりだ。ありとあらゆる人が、自分の裸身を見つめている姿がいやでも浮かんできてしまう。
「じゃあ、しっかり反省しとくことね」
みさきはやっとのことで制服まで着ていた。彼女は鞄を手にすると、一刻も早くこの場を離れたくて、水泳部室のドアを開けるなり駆け出した。
夏だけに外はまだ明るいが、もう誰の姿もない運動場を突っ切り、校門を出た。
忌まわしいあの場所から離れたことを確かめると、彼女はようやく一息つき、家路を悄然と歩くのだった。