「後悔」-4
長尾が自宅に戻ったのは真夜中だった。
撮影の後、沙織をマンションまで送ったが、その間、彼女は一言も話さず、長尾と目を合わせようともしなかった。
「お疲れさまでした…。」
別れ際のあいさつも、感情のない、きわめて儀礼的なもので、沙織の怒りや悲しみ、絶望がひしひしと感じられた。
あまりの後味の悪さに、長尾は酔わずにはいられなくなって、馴染みの店に飲みに行ったのだ。
あやしい足取りで階段を上った長尾は、部屋に入る前に郵便受けの中のものを無造作に取り出した。チラシやダイレクトメールに交じって、ネコのイラスト入りの可愛い封筒が入っていた。「マネージャーへ」という丸っこい字は、沙織のものだ。
胸の痛みとともに、長尾はもつれる指ももどかしく、封筒を明けた。中から、封筒とセットの可愛いカードが出てきた。丸っこい文字を読むなり、長尾は呼吸が止まりそうになった。
「お誕生日おめでとう。いつも沙織のこと大事にしてくれてありがとう。マネージャーのこと大好きです。」
喉をヒクヒクさせ、長尾は男泣きに泣いた。失った物の大きさを噛み締めながら…。