女らしく【09】『子供と子守と子育て』-1
「どうだ?かわいいだろ♪」
「!!!」
詩乃の目が、壊れたみたいに見開かれる。かなり驚いているようだ。
普段ならば飛び付いてくるのだが、今日は違う。
だって、隣りには大和がいるし…
それにオレの腕の中には角のついた小さな女の子がいるから♪
「おね…」
半開きだった口がようやく言葉を紡ぎ出した。
おね?
「おね…おねえ…お姉様の……ぶぁかああぁぁああ!!うわぁぁあああん!!」
いきなり泣き崩れる詩乃。漫画ならば涙が放物線を描く様な見事な泣きっぷりだ。
「お、おい…詩乃どうしたんだ?」
心配そうに大和が尋ねた。
「ひぐっ…お、お姉様に…ぐずっ…こんな鬼との…ひぐっ…か、隠し子が…うわぁぁあああん!!」
さらに号泣。そして、いきなり激怒し、大和に詰め寄る。
「貴様ぁああ!よくも私の大切で神聖で可憐なお姉様を無理やりぃぃいい!!!死ね!死んで詫びろ!!でも死んでも許さああぁぁあん!!!」
支離滅裂。
意味不明。
理解不能。
「詩乃…この子は俺ともマコトとも何にも関係ないぞ」
胸ぐらを掴まれながら、事実関係を簡単に否定する大和。
何だよ…そんなにあっさりと否定しなくてもいいだろ…
もう少しだけ…大和との夫婦気分を味わってたかったのに…
「じゃあ、その子は何なのよぉ!!」
詩乃が吠える。
「その子は私の保育所の子です」
オレと大和の後ろから赤い服を着た女性がひょっこりと姿を見せる。
「このヒトは?」
「子安と申します。この近くで異形の子供専門の保育所を開いているんです」
「その保育士さんが何故此所に?」
まあ、当然の疑問だな。
「実は今日所用で子供達を預かることが出来ないので、他の子は親御さんに引き取ってもらえたのですが、この子だけが都合が合わず…」
それで近くのこの学園を頼ったってわけだよ。
そしたら、夏休みで暇なオレと大和に子守を任されたんだ。
ちなみに、子安さんはヒトじゃなくて姑獲鳥(うぶめ)。
姑獲鳥について知りたい奴は京◯堂シリーズとか読むと分かりやすいと思うぜ♪