血統書つきの美少女-3
『ヒヘヘ……もしかしたらさあ、お客様の中にすーちゃんファンが居るかもしれないねえ?写真集とか買って、めちゃくちゃオナニーしてるヤツがさあ…?』
「ッ!!!」
いきなり飛び出してきた卑猥な台詞に、涼花は嫌悪を露わにして顔を背けた。
それは涼花にとって初めて鼓膜に触れた、禁忌の言葉だった。
『……なにソレ?オナニーって言葉を知ってなきゃ、そんな態度にならないよねえ?』
「ひッ…!?し…ッ…知らない…ッ!」
こんな幼い顔立ちの少女が、あの言葉が何を表しているのかを知っている。
佐々木は奇妙な苛立ちと、それを上回る興奮に浸っていた。
……川上愛は、川上雪絵の血をひく血統書つきの美少女だった。
そして森口涼花も、女優の肩書きを持つ血統書つきの美少女だ。
写真集の売れた数だけ涼花をオカズにした者が存在し、その性欲の対象である美少女は、自分の腕の中に居る。
この優越感は川上愛の時を遥かに上回り、それと同時に購入者からの失望≠かう訳にはいかないという責任も感じる。
いや、下手な考えはやめた方がいいだろう。
森口涼花という新人女優を《姦る》コトに変わりはないのだし、今までの反応を見ていれば、涼花は少女嗜好の変質者を悦ばせる事に長けている。
興奮のままに、しかし、カメラワークを意識して……佐々木は真正面から捉えてくるカメラマンのアングルの邪魔にならぬよう涼花の真後ろに上体を置き、掲げられた二の腕にそっと当てた掌を、脇腹にスルリと滑らせた……。
(やめッッ…やめろぉッ!汚い手で涼花さんにぃッ!)
明日香が涼花の家庭教師になったのは、友人からの誘いがあったからだった。
その時、涼花はまだ小学六年生で、キャラバングランプリで優勝した直後の事だ。
大学の夏休み、少しのお小遣い稼ぎの軽い気持ちで引き受けた明日香は、先入観からか涼花と会うまで良い印象は持たなかった。
行け好かない小生意気な娘に、ちょいちょいと勉強を教えてやればいい……その程度だった。
だが、その認識は初日から崩れた。
いや、明日香は自分の先入観を恥じた。
涼花は実に礼儀正しく真面目で、そして素直な少女だった。
グランプリ優勝など口にする事もなく、真摯に明日香の教えを聞き、そして身につけていった。
子供らしい疑問を投げかけられる事も、そしてプライベートな悩み事を打ち明けられているうちに、まるで姉妹のような信頼関係がいつの間にか築けていた。
浮き沈みの激しい芸能界で、涼花がどこまでやれるのか、明日香には分からない。
だが、微力でも協力しようと明日香は思った。
涼花がグラビアを飾った雑誌を購入したり、初となる写真集も手に入れた。
女優としての役を貰ったと聞いた時は、我が事のように喜んだ。
涼花の歩む道は、先々まで明るい光りに照らされていた。
哀しみや挫折もあろうが、その光りだけは失われたりしない……そう信じていた……信じていたのに……。