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人権のない女子高生
【鬼畜 官能小説】

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 通称、人権剥奪法。正式名称は忘れた。連帯なんたらみたいな長い名前だったと思う。
 なぜそんな通称なのかと言えば、これを執行されたものは殆どの法律から守って貰えなくなるのだ。
 守られるのは命と金銭だけ。金銭が守られるのは命の危険に繋がるからだ。水が飲めない、食べることもできない、なんてことになれば生きてはいけない。
 しかし、それ以外は守られない。所持品を奪われようが、尊厳を踏みにじられようが、暴行を受けようが。加害者は何ら罪に問われない。いや、加害者、被害者という形式にすらならない。だって、被害者はモノなのだから。

 この刑法の変わっているところは執行されるものは犯罪者ではないことだ。同居している家族が凶悪犯罪を犯した際に、その家族に執行される。同居していながら、家族でありながら、それの凶行を止めることが出来なかった。それを罰せられる法律なのだ。
 そのため、人権剥奪法が執行された人のことは犯罪者ではなく、懲罰者と呼ばれる。

 私の場合、二年前、父に懲役十二年の審判がくだった際に懲罰者となった。父の服役が終わるまで、つまり二六歳になるまでの間、私は法律から守られない、モノに成り下がることになる。

 懲罰者にはいくつかの制約が科せられることになる。
 ますば自殺の禁止。この法律は、犯罪を犯したら家族が大変な目にあいますよー、という見せしめの法律だ。だから、簡単に死なれては困る。
 それから、刃物の所持の禁止。自殺防止のいっかんだ。ついでに言えば先端の尖っているものも、同様に所持が禁止されている。
 名前も名乗ることは許されず、懲罰者には番号が与えられる。懲罰中はその番号を名乗り、呼ばれることになるのだ。

 他にもいろいろ細かい制約はあるのだが、一番悲惨なのは住む家。これは国から家が指定される。そこ以外に居を構えることは許されていない。それの何が悲惨かといえば、その家にはいたるところにカメラとマイクが仕掛けられていることだ。
 リビングやダイニング、玄関はもちろんのこと、自分の部屋、お風呂、果てはトイレにまで。カメラとマイクが仕掛けられており、家にいる限り二四時間、何処にいても常に撮られ続けるている。
 これは犯罪者の家族が同じように凶悪犯罪を起こさないか、また自殺をしないか、そういった監視が目的だ。
 仕掛けられているカメラは写っている人間を自動で追いかける。つまり、どこをどう動こうと、カメラから逃げる事はできない。マイクも集音性が高く、どんな小さな音も拾うことができるとか。

 そして、録画、録音されたものをどうするのかと言えば、国の用意した専用のホームページでリアルタイムで配信される。
 『国民の目』、通称『国カメ』という名の動画配信サイトにログインすることで、私の私生活を覗き見ることができてしまうのだ。
 ただし、ログインのためのIDとパスワードは未成年者には発行されない。また、大人でも高額納税者か、税金とは別に国に高額のお金を支払ったものにしか発行されない。国民の目と言いつつも、国民全員が観ることはできないようになっている。

 執行された当初は当然抵抗感があった。いや、抵抗感なんて生易しいものではない。私の下着や裸を知らない人に見られているのだ。そう思うと落ち着かないどころではない。嫌悪感とかより、まず吐き気がした。実際、何度も何度も吐いた。学校に行ったらそれを弄られるのではないか、そんなことも思ったが、学校では誰一人としてそのことをつついてくるクラスメートはいなかった。
 そのせいか、ある程度開き直ることはできた。知らない人、つまり会うことがない人。そう思えば、少しは気は楽になった。むしろ、そう思わなければ精神に異常をきたしていたかもしれない。いや、気は楽になった、なんて思うあたり、とっくに異常をきたしているのかもしれないが……。

 学校では悲惨なものだった。男子からはシカトされ、女子からは誹謗中傷は当たり前、物を隠されたり壊されたり、ブルセラ紛いのこともさせられた。
 好きだった人と会話もできず、仲の良かった友達からは石を投げられた。それが辛くて私は生まれ育った町から逃げ出したのだ。
 進路希望で別の県の高校を希望したところ、この高校をあてがわれた。文字通りあてがわれた。試験も面接もなく、ただ四月からここへ通えと、その通達が国からあったのだ。

 母も辛かったのだろう。名古屋の高校の入学に合わせて、一緒に名古屋についてきた。仲の良かったご近所さんやママ友さん。そういう人達から辛いこと、辛い目に合わされたようだ。直接聞いたことはないが、容易に想像がつく。
 田舎なんてそんなものだろう。名古屋であれば都会だ。近所付き合いも希薄と聞く。だから、二人で名古屋に引っ越すことになった。

 工業高校ということもあり、生徒の九割以上が男子だ。男子からのイジメは大したものではなかった。シカトぐらい。それも新天地であれば、シカトされたとしても仲の良かった人から、好きだった人からのものではないから耐えられるだろう。
 そう思っていた。だがその認識は甘かった。それを今、私は思い知らされた。


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