5日目-2
目が覚めた。ゆっくり起き上がって目を擦った。
夢か…
旅館の部屋を見渡した。ももちゃんは、いなかった。
どこに行ったのかな…
昨夜は4回も、してしまった。
何時まで愛し合っていたのだろう。部屋には時計がないから、わからなかった。
ケータイを出して見た。今は朝6時。
また本館かな。探しに行こう。
僕も部屋から外に出た。市街地と違い、朝の空気が爽やかだ。
部屋の周りはちょっとした庭園のようになっていた。
僕はブラブラ歩いていた。
さっきの夢が、なぜか気になる。あの少年、見覚えがある。
…思い出した。小学校から中学二年まで友達だった、早川和裕君だ。
親の転勤で中二の時に引っ越してしまった。それ以来、連絡も取ってない。
たしか、妹がいたはずだ。あの少女がそうか。
それにしても…
夢の中の和裕君は、妹を桃香と呼んでいた。しかもあの子の顔…ももちゃんに、そっくりだった。
バカバカしい…僕は苦笑いした。
そんな偶然あるわけない。何度も抱いて、ももちゃんの事が好きすぎて、夢の少女が彼女の顔と名前になったんだ。たかが夢だ。
そもそも、僕は和裕君の妹の名前を知ってたかどうか、記憶にない。
その時、視線を感じた。ももちゃん?
振り返ると、ずっと向こうの庭の端に、女性がひとり立っていた。
僕はその姿に不自然なものを感じた。
黒いワンピース。長袖で、首元もぴったり閉じられている。裾の丈は、足首まである。この熱い時季に…
葬式でも、もう少し涼しい服装をするだろう。
ツバの広い黒い帽子。黒いサングラス。
彼女はじっと、こちらを見ているようだった。