4日目-5
絵馬を掛ける場所があり、そこにはすでに無数の絵馬が、ひしめきあっていた。
これだけのカップルが訪れたということだ。
ももちゃんは驚いていた。
「すごいね…!」
「この先ずっと、この場所に残されるんだよ。僕達の名前が」
「この人達みんな、幸せになれたのかな…」
「わからないけど、そうだといいね。ももちゃんは?今、幸せ?」
彼女は、最高の笑顔を見せてくれた。
「幸せだよ!だってお兄ちゃんと一緒だもん!」
ふと、思った。
亮がももちゃんを迎えに来ないと思ったのは、僕の勝手な思い込みだ。携帯を持っていない事から想像しただけで、他に根拠はない。
もしかして今日にでも、アパートに迎えに来るかもしれない。
その時、誰もいなかったら…どうなるか…
いや、もう覚悟は決めたんだ。
僕はもう、ももちゃんと離れるつもりはない。
少し離れた、見晴らしの良い場所に、ベンチが置かれてあった。丁度いい感じに木陰になっている。
「ちょっと座ろうか」
と、ベンチに腰かけた。
するとももちゃんは、僕の膝の上に、向かい合わせに乗ってきた。僕の体に腕を回した。
「ももちゃん…だめだよ。誰かに見られたら…」
「大丈夫。誰もいないよ」
たしかに、さっきまでは何人かいた観光客が、いなくなっていた。
「お兄ちゃん…ありがとう。こんな綺麗なところに連れてきてくれて」
「ももちゃんが喜んでくれるなら、どこでも行くよ」
「わたしね、お兄ちゃんを好きになって本当によかった…」
「ももちゃん…」
ふたりの唇が近づいて…重なった。
ももちゃんを抱きしめた。
強く抱いたら折れてしまいそうな、華奢な体を。
風が、頭上の木の葉をざわめかせていた。