1日目-2
「なにこれ?外より暑いよ!すごい散らかってる!」
桃香ちゃんは、あきれたように言った。
留守中、閉めきっていたので、暑いのは当然だ。僕はため息をついて、エアコンのスイッチを入れた。
一体どういう事だ?この子は何者だ?僕は困惑して説明を求めようとした。
「あのね、君…」
「桃香だよ。ももって呼んで」
「えっと…ももちゃんは、なんでここに来たの?」
ももちゃんは座ると、ショルダーバッグから封筒を出して、僕に手渡した。
「お父さんからだよ」
それは僕の従兄弟、大橋亮からの手紙だった。
彼は僕より3歳年上だ。
元々両親と仲が悪く、大学卒業と同時に絶縁宣言をして家を出てしまった。15年前の事だ。
以来誰も亮の行方は知らない。
彼の両親も、今は亡くなっている。
《 耕平君、久しぶりだね。
僕は今、結婚して子供も産まれ、幸せに暮らしている。
実は今度、夫婦で海外旅行に行くことになった。しばらく戻らない。
桃香はまだ12歳だ。ひとりで留守番させるのは不安で、君に世話をお願いしたい。突然こんな事を頼んで申し訳ない。
迷惑とは思うが、他に頼る身内もいない。君にしか頼めないんだ。娘の事、よろしく頼む。》