投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

妻を他人にの最初へ 妻を他人に 274 妻を他人に 276 妻を他人にの最後へ

人妻の浮気心 (2)-1

「ふわぁ……ぁ」

 大きなあくびが思わず出たことで、ゆきは自分が疲れて眠いのだと自覚した。たまに訪れる、家に誰もいない休日の昼下がり。子どもたちはそれぞれ友だちの家に遊びに行き、夫もどこかに出かけている。急に学生時代の友人と会うことになったと言っていたが、久しぶりの友人と事前連絡もなく急に会ったりするものだろうか。珍しいこともあるものだ。
 昨日は一ヶ月ぶりのFとのデートで盛り上がってしまい終電を逃しタクシーで帰宅した。夫との「セックス報告会」でそのことを責められ、激しく犯された。興奮したゆきは、内緒にしておくつもりだったYとの昼休みデートまで追求された挙げ句に認めてしまい、やはり興奮した夫にひどく尻をぶたれ、泣いて許しを請うた。

 紅茶をすすり、リビングのソファにごろりと横になる。
 最近のゆきは一日で三人の男性とセックスすることも珍しくない。三者三様のペニスの形が口に、膣にまだありありと残っているし、尻の穴だって少しひりひりする。自分が他人に抱かれることが夫婦関係の適度なスパイスとなっている今の状況を、ゆきは楽しんでいた。
 とくにYと再び結ばれてからは、八年前の日々を思い出すことが増えた。罪悪感に押しつぶされそうになりながら連日関係を持ってしまったひと月あまりの記憶には、苦さと甘さが同居する。夫には絶対に知られてはいけない、ゆきにとって大切な人生の一ページ。

 カフェインを物ともせず眠くなる頭の中で後悔と興奮が混ざり合う。押し寄せる感情の塊に、胸が締め付けられる。

  *

 ラブホテルの狭い入り口をYと手を繋ぎくぐった。

 ロビーでYが部屋を選ぶのを横目で見る。整った顔立ちの彼の顔を見上げている今の状況に現実感を感じない。まったくありえない。
 ここに至るまでもありえないことだらけだった。電車が止まっていなければ今ごろゆきは帰宅し、笑顔で夫に「ただいま」をしていたはずである。幼い子どもたちの寝顔にキスをし温かい風呂につかってほっと一息ついているはずの時間に、なぜ私は夫以外の男性とラブホテルのロビーにいるのだろう。いったい何をやっているのだろう。そしてこの胸の高鳴りはなんだろう。

 乗り換え駅でキスされた左手の甲を、今でもときどき眺めてしまう。誰にも言えない、言えるはずもないが、密かに心を寄せていたYは、いったいこの手の甲をどんな想いで見つめ、キスしてくれたのだろう。薬指の結婚指輪の輝きが少しくすんで見える。悲しくなってYのことを頭から振り払い、心の中で夫に「ごめんなさい」とつぶやいてみる。そんなことを八年間繰り返してきた。

 振り払ってもYの存在が消えないとき、ゆきは股間に手を伸ばす。
 デニムパンツのファスナーを開き、もぞもぞと手を差し入れる。すでに熱く潤った割れ目をショーツの上からなぞり、あの夜の記憶を辿る。Yが海外に旅立つまでひと月足らずの間に、ゆきとYは何度も身体を重ねた。夫への罪悪感が膨らみ、花芯から蜜が溢れ出す。

 あの日、久しぶりの飲み会に快く送り出してくれた夫。「時間を気にせずしっかり送別してあげて」と夫はどこまでも優しかったが、ゆきが本当に送別したいのはYだった。
 あのとき自分の中に、微かな浮気心がなかったと言えば嘘になる。それでも、ゆきとしては夫の言う通り「しっかり送別」するだけのつもりだった。当たり前である。いつもより少し多めに会話ができたら嬉しい、近くに居れたら嬉しい、目を見てしっかり「さようなら、頑張ってね」を伝えたい、それだけのはずだった。送別会が終われば何ごともなく日常に戻る。Yへの仄かな想いは、一生夫には秘して心にしまっておく。それだけのはずだった。

 手をショーツの中へ挿し込む。べとついた陰毛を掻き分け、ゆきの細い指は花びらを深く割り、花芯の奥へ導かれていく。下腹部がじんじんするたび腰は小さく跳ね、脳が痺れる。オナニーでゆきが一番好きな時間、頬の火照りを感じてじっくり楽しむ。Yとの思い出を抱きながら――。

 何度考えたことか。駅へ向かう道で、Yと二人きりにさえならなければ。夜の公園に寄り道さえしなければ。人妻としての立場を忘れ「二人だけの送別会だね」なんて浮ついた発言さえしなければ。手を握らなければ。満員電車で「恋人繋ぎ」をきちんと拒否していれば。どこかで意思を持って踏みとどまれば、駅のコンコースでYにキスされることもなかったはず。キスされなければ電車が止まっても「タクシーで帰るね」と言ってさよならできた。
 そういえば一次会のあと麗美に「一緒に帰ろ? 二人で少しお茶してかない?」と誘われたのだった。もう少しYのそばにいたくて二次会に行くことを選んだのだが、あのとき麗美を選んでいれば。彼女も久しぶりの飲み会参加となったゆきと、積もる話をしたそうにしていたっけ。

 リビングに、クチュリ、クチュリといやらしい音が響いている。オフィスでYに抱かれたときも同じ音がして、顔から火が出るほど恥ずかしかったのを思い出す。

 小さな選択と偶然が積み重なり、ゆきは人妻として一線を越えてしまった。罪悪感は八年たった今も消えることはない。いっそカミングアウトしてしまおうと考えたことも一度や二度ではない。とくに夫が寝取られ性癖の持ち主と判明してからは、ひょっとして許してくれるんじゃないかと図々しい打算が働くこともある。
 しかしそれで自分は楽になったとして、その分、いやそれ以上に夫は苦しむだろう。「苦しいから興奮するのだ」と夫は常々言うが、それはつまり、夫は傷ついているということだ。ましてそれが夫も了解済みのZやFではなく、自らが預かり知らぬ八年前の浮気だったら――。やはり浮気をした人妻は一生罪悪感を抱えて生きていくべきなのだ。


妻を他人にの最初へ 妻を他人に 274 妻を他人に 276 妻を他人にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前