Perfume-17
―――――ギィィィ・・・ギィィィ・・・ギィィィ・・・・
「 !!! 」
部屋の片隅から聞こえてきた金属製の梯子の軋む音と今まで感じなかった人の気配に、
セリスは思わず音のした方に視線を動かす。
そこには上半身裸の管理人が身もだえているセリスの姿をじっと見つめている。その手には脱いだばかりの自身のシャツと薔薇の活けられた花瓶があった。
最初に顔を合わせた時と同じ無表情のままで。
「・・・いつまで私を・・・こんなままにしておくの・・・・・」
最初に口火を切ったセリスの問いかけに、管理人は視線を交わらせることなく表情を崩さないままセリスの前を素通りする。
「・・・その口調、もっと責めて欲しいように聞こえるが」
「 !!! 」
「しかし・・・これだけバイブによる責めを受けていたら、大抵力を使い果たしてものを言う余裕もないはずだが・・・・やはり、他の貴婦人方とは違うな・・・・」
男は手にしていた花瓶を部屋の隅にある卓上に置いた。
セリスの目に地下室には似つかわしくない様々な色と形の薔薇の“花弁”が映り、
先程まで辺りに漂っていた地下室特有の“かび”の匂いが一転、彼女が薔薇園に来た時から嗅いできた“薔薇”へと切り替わった。
鼻腔を擽る甘い香り。
地下室という密閉空間の故か、屋外で嗅いできたよりも濃密かつ刺激的に感じられる。
そんなセリスの感覚の変化に裸体が反応したせいか、
彼女の下腹部が一層疼き、熱を帯び、その肌にはじんわりと汗が滲んでくる。
「・・・・・・・・」
自然と息が荒くなってきたセリスの様子を、部屋の隅からじっと見つめる管理人。
やがて彼自身がセリスの変化を見ているだけなことに堪えられなくなったのか、ゆっくりとベットの傍らにまで近づいてくる。
ここで漸くセリスは目の前の男の明らかな“変化”に気づいたのだった。
表情を崩すことはなくとも、これまで瞳の中に見出だすことができなかったもの。
そう、セリスを求める男特有の“欲望の焔”を―――――――――――