(過去前編)盗賊ゲリラ村の虜囚パトリシア-1
1
口に、出がらしのコカの葉っぱを咥えて(そのゲリラ拠点では麻薬の原材料のコカを栽培していた)、服を脱いでベッドに横たわる。
昼間の炊事・洗濯やコカ畑での強制労働に比べれば、肉体的には楽なものだった。精神的苦痛と屈辱感を別にすれば、の話だが。幸か不幸か、麻薬成分を抽出した後のコカの葉っぱを拉致してきた女たちに支給し、不満や苦痛を和らげる習慣だった。
その昔、南米コロンビアの先住民インカ人などは労働や飢餓の苦痛を和らげるためにコカの葉っぱを噛む風習があり、また手術や負傷への麻酔だったり、マテ茶は高山病の薬だったそうだ。けれども、どんなものでも悪用されてしまうのが世の習いらしい。やはり今ではコカといえば麻薬コカインの原材料である。
パトリシアは最初のうち、コカの葉っぱを噛んだりするのを忌避していた。使い方次第で危険性は低いらしいけれども、やはり中毒になるのが怖かったからだ。だがじきに耐えられなくなった。救出される望みがないのであれば、将来の危惧も何もない。
「どうぞ。優しくして」
ベッドの上で、自分から女の顔で媚びへつらって、M字に股と脚を開いて歓迎のポーズをとる。その方が扱いが良くなるからだし、下手に抵抗して苦悩の時間を長引かせることもない。
毎晩の割り当てノルマはせいぜい五人から多くて十人くらいだし、一人二回としてもせいぜい二十回ほど不特定多数に犯されるだけだ。あまりやり過ぎれば、「汚れた便器」では具合が悪いなどと言われている。
この「虜囚の奴隷女」の居住場所は隠語で「メスブタ小屋」だの「便所」と呼ばれている。彼女たちは奴隷労働力なだけでなく、生きた性欲のはけ口で溜まった精液をぶちまける人間便器でしかない。
なまじっか、逆らえば乱暴にされて痛い目をみるだけだったし、従順にすればコカの葉っぱのせいで多少は虚しい快感がなくもない。
こんなやり方も、思慮というもの。
「あー、あー、ふーうっ、い、いくぅ」
相部屋のミレーユは寝台をギシギシ言わせて組み敷かれながら、だらしのない喘ぎ声を漏らしている。
「きちゃう、アクメきちゃうううう! んんっ!」
あの巻き毛の眼鏡娘は最初は嫌がっていたが、じきに慣れて「環境適応」してしまったらしい。一見は内気で、古い時代の恋愛詩集なんか読んでいたくせに、案外に好き者の資質でもあったのだろうか。