道場での対決-1
第弐弐ノ章【道場での対決】
膨らむ股間を押さえた2人が、亀起道場へ向かう途中の事。唐餅右衛門が伝え忘れていた事を、再び頭巾姿になった男に伝えた。
「亀起瓶之真が金で納得しても、弟の竿之介は叩きのめすつもりですので」
「ん?」
「あやつだけは赦す事はできませぬので、邪魔はしてくださいませぬように」
とにかく、手足の2、3本を折らないと気が済まなかった。
「どういう事だ?」
「実は、我が家から逐電する際に後ろから殴られたのです」
「なんと卑怯にも後ろからとな?子供とはいえ、武士の風上にも置けぬな」
「ええ、まあ…」
さすがにお満を犯そうとする最中だった事は濁した。
「わかった。それも込みで交渉いたそう。道場なので稽古にかこつけたら、竿之介がどうなってもお満も納得しよう」
「ご配慮、ありがとうございます。ささ、ここです」
貧乏道場の常、戸締まりをしていない潜り戸から、2人は敷地内に入っていった。
−あああああん−
敷地に入った途端、男達の耳に女のなめかしい声が届いた。
「こ、これはまさか、お満の声か…」
「なに!それは真か?」
−もっとしてぇ、ああっ、お満のおまんこにぃいい、ああん、もっとおおお−
男の疑問に、間がよくその声が返した。
「ま、間違いないようです」
餅右衛門は苦々しく答えた。
「なんと、母屋でなく道場から聞こえてくるではないか。亀起瓶之真め、神聖な道場でするとは、剣者の風上にもおけん!曲がった性根を鍛えてやる!」
頭巾越しでも、怒り心頭の男の様子がわかった。
「では、金での解決ではなく?」
餅右衛門は煽るように確認をした。これで出さなくてもいい金が浮く。餅右衛門は内心でほくそ笑みを浮かべた。
「左様、この手で成敗してくれるわ!」
勝手に押し掛けたとはいえ、若い女体が味わえると思っていたのに、冷や水を掛けられたのだ。それまでウキウキしていた反動の分、その怒りは大きかった。
「な、なんと…」
急ぎ道場内に入った2人は絶句した。
「ああん、いい、ああん、奥まで届いてるううう、ああん、ああん」
四つん這いの姿勢で、喘ぎ声を上げるお満の相手が、予想と違っていたからだ。
「お、おのれ竿之介…」
餅右衛門は、お満の尻に向かって腰を打ち付ける竿之介を見て、刀の鯉口を切った。
「棚唐殿、いくら道場内と言っても真剣で叩き切ってはまずかろう。あくまでも稽古内の事とするために、これを使うのじゃ」
相手が子供となれば自分の出番ではない。男は壁に掛かっていた木刀を取り、怒りの大きさに勝る餅右衛門に手渡した。
「はっ…。そ、そうでした。これで頭をかち割ってやります。おいっ、竿之介、やめーい!」
木刀を受け取った餅右衛門は、いまだに気付かず腰を振り続ける竿之介に怒声をあげた。
「えっ?あっ、叔父上!あ、姉上、大変でございます!」
「やあん、もっとお、もっと突いてよお」
逆ぱんぱん。竿之介が動きを止めたため、もの足らなくなったお満は、自ら竿之介の腰に尻を打ち付け始めた。
「あ、姉上、それどころではありませぬ。叔父上が来ております」
「なにを申しておる。叔父上がここに来るはずは…、あれ?叔父上?えっ?きゃあああああ」
顔を上げて餅右衛門と目が合ったお満は、垂れ下がる胸を手で隠した。
「おのれ、竿之介!早くお満から抜いて木刀を取れ!」
怒鳴った餅右衛門は上段に構えた。
(さて、どうしたものか…)
思案しながら、お満の中からゆっくりと抜く自身の肉棒を見て、竿之介は閃いた。
「ふふふ、今の私は無敵。叔父上の上段の構えに対して、こちらは二刀流で受けてたちましょう」
お満から抜いた竿之介は不適に微笑むと、1本の木刀を右手に取った。
「それでは二刀流にならぬぞ。ふん、その意味も知らぬのか」
鼻で笑った餅右衛門だったが、竿之介の次の行動で、怒りの余り冷静さを失ってしまった。