道場での対決-2
「ふふふ、叔父上、これが私の二刀流でございますぞ。名付けて『秘剣硬軟二刀流』」
竿之介は空いた左手で肉棒を握ったのだ。
「お、おのれえ!愚弄しおって!」
怒りのままに前に出た餅右衛門に向けて、竿之介がずりずりと肉棒を扱いた。
どびゅっ!
瞬時に飛び出した迸りは、狙い通りに餅右衛門の目に、べちょっと掛かったのだ。
「うわっ!」
驚いた餅右衛門に向けて、竿之介は追いずりを掛けた。
どびゅびゅっ!
制御の効いたその迸りは、驚きで開いた餅右衛門の口の中を通って、喉を直撃した。
「ほげええええっ!おええええっ!げほっ、げほっ」
こうなっては、相手が子供でも太刀打ちできない。
「えいっ!」
竿之介は苦しむ餅右衛門の頭に木刀を打ち込んだ。
「ぐぬうっ…」
餅右衛門は白目を剥いてその場で気を失った。
「どなたか存じませぬが、あなたも同じようになりなくなければ引きなさい」
餅右衛門を倒して気をよくした竿之介は、頭巾の男に視線を向けた。
「ふふふ、笑わせてくれるのお。それがしは、棚唐殿のようには参らぬぞ。誰にやられたか知って、悔しがって死ね」
男は被っていた頭巾を脱いで顔を晒した。
「おうおう、あの愚か者の小俣によく似ておるのお」
「あっ!お、お前は荒利取之助ではないか!」
「なんと、荒利とな。おのれ荒利、どの面下げて我らの前に姿を現したのじゃ」
思いもしなかった人物の登場に2人は驚いたが、それ以上に怒りが込み上げてきた。竿之介は木刀を構えた。
「ほほう、それがしに挑もうとは、父親以上の愚か者よの」
「うるさい!」
怒りの余り、二刀流を忘れた竿之介は、荒利に向かって打ち込んだ。
「ふん、おぬしなど素手で十分じゃ」
竿之介の一撃をかわした荒利は、瞬時に竿之介から木刀を奪い取ると、一連の動作で竿之介の腹に拳を打ち込んだ。
「ぐわあっ!」
「竿之介!」
苦しみで、のたうち回る竿之介を心配したお満が、駆け寄ろうとしたが、それを荒利が奪い取った木刀で制した。
「おのれ、荒利ー!」
「ほほう。凄んだ顔も、お敏殿に似て可愛いのお。それよりも、その身体じゃ。なんともそそる身体をしておるではないか」
「見るな!穢らわしい!」
手で胸と割れ目を隠したお満が、嫌悪感のある目を荒利に向けた。
「隠すな。もっと見せよ」
「誰がお前などに」
「ならば、これならどうじゃ」
荒利は、苦しむ竿之介の肩を木刀で軽く叩いた。
「ぐううっ…」
「竿之介っー!」
お満は目を見開いた。
「次は手をへし折るか。その次は足、いや、その小憎らしい肉棒を叩き折るか」
荒利が持つ木刀の切っ先が、竿之介の肉棒にピタリと着けられた。愛する弟をたてにされると、お満には為す術がなかった。
「わ、わかりました。見せまする」
慌てて直立の姿勢を取ったお満の胸が、反動でぷるぷると揺れた。
「ほお。そんなに見て欲しいのか」
「くっ…、べ、別に見せたくはない…」
お満の顔が羞恥と悔しさで歪んだ。
「そうか、見せたくなければ、隠していいぞ」
荒利が、再び木刀を竿之介の肉棒に近付けた。
「わ、わかりました。見てくだされ」
「なら、一興じゃ。その場で跳ねて見せよ」
荒利はにやにやと笑った。
(またあ。どうして男は同じ事ばかり考えるのか…)
お満は、内心でぼやきながらその場で跳ねた。