芋掘りレジスタンス村の日常2/(参考コラム)最近の太陽光パネル発電の問題と落とし穴-1
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その日、パトリシアが夕方の昼寝からやや遅く目を覚ますと、カプリコンの荷台でセラが犬にまみれていた。せっかく洗ったから、などと「犬の生き物布団」を味わってみたいという動機犯行だった。
最初、頭部コックピットから見下ろしたら、犬が五六匹くらい群がっていた。
何事かと思ったら、やっぱり真ん中にセラが。
大部分は仲良く昼寝しているものの、うち一匹はセラのスカートに頭を突っ込んでいる(激しく尻尾を振りながら)。どう考えても、牝の臭いに反応しているとしか思われない。
(あんた、そのうち犬に犯されてそうじゃない?)
そもそも、ここまで派手にやらかしてしまえば、セラ自身が「犬臭く」なるだろう。
夜に同衾で戯れする前に、セラを洗う必要がある。
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まず、リフトで荷台に下りてやったことは、近場の水源に取水ホースを落とし、入浴用のドラム缶に注水することだった。途中で水を加温し、さらにドラム缶そのものも加温する。幸いにソーラーパネルと地磁気発電装置は稼動中であったし、パネルはちょうど日よけや風除けのようにもなっている(荒野ながら、人目をあまり気にせずともよい)。
この辺りは安全エリアだったが、一応は警戒システムはオンにしておく。それ通りがかりの村人が双眼鏡で入浴観察していることがままあり、パトリシアや他の女性のあられもない望遠写真や動画は、共用の電子ネットワークで既に出回っている。
ちょうどカプリコンは「待機・キャンプモード」であるため、両脚と背中の間にスペースがある。犬どもを一匹づつ釣り下ろし、犬シャンプーと一緒に配給されたドッグフードとバケツの水を振る舞ってやる。
「んー? パトラ、何やってるの?」
荷台から見下ろして、セラが寝ぼけ眼に訊ねる。
パトリシアは「はあ」と溜め息した。
「洗うのよ、あんたを。そんなに犬の臭いプンプンさせて、こっちの身にもなってよね」
「え? お湯のお風呂する? ありがと!」
セラは素直に喜んでいる。
普段は身体を拭くだけだったり、温水シャワーを浴びるくらいで済ませることが多いのだ。お湯を溜めるのはけっこう手間で面倒なので。
どうせなら、まだ明るいうちに済ませたい。
いくら比較的に安全なエリアとはいえ、夜は荷台や胴体コックピットの寝台で休まないと安心出来ない。
ちなみに「安全エリア」というのは、村の支配テリトリーの中で周縁部から距離があることとパトロールによる治安維持・監護体制があること。
さっき近くを通り過ぎた「イヌノフグリ」などは、見た目のコミカルさとふざけた愛称に似合わない強力な戦闘力を持ち、正式名称は「プリメテウス型二足歩行戦車」という。ガバナー型(支配制圧歩兵型)と同様の州軍閥主力の正式採用タイプだが、地域の保安力強化を目論んだ払い下げで民間にも出回っている。
プリメテウスやガバナーの球体に近い本体部分は樹脂やセラミックに金属フレームを使った高い防御力を持ち(球体は物理衝撃に丈夫である)、内部スペースは人員や物資やエネルギータンク・バッテリーの積載量も多い。民間向け大型ウォーカーのカプリコンに比べても出力があって、値段に価値換算すれば、本体部分だけで倍近い。しかもプリメテウスに至っては両腕がレーザーガン(ナパーム兼用)で、突き出した腹の股間部分には大型キャノン砲やミサイルポットを追加増設できるため(物資輸送コンテナのオプションもあり)、火力攻撃力が段違いだ(カプリコンも大型機関砲を備えてはいるが、一撃の破壊力や攻撃範囲では劣る)。