忍び寄る影御一向様 ご休憩-1
第弐○ノ章【忍び寄る影御一向様 ご休憩】
「あううん!」
揺られる駕籠の中で、まったりと割れ目を弄っていたお早世(させ)は、突然襲ってきた快感に身を震わせた。
「な、なに今の?凄く気持ちよかったけど」
駕籠の揺れで秘豆を強く擦ったわけでもない。しかし、その中途半端な快感は、淫乱な女体に火を着けるには十分だった。お早世の割れ目を弄る指の動きが早くなった。
「はあ、はあ、はあ、やりたい…」
その異変は駕籠の外にもあった。小気味良い一定の揺れが、お早世が快感に襲われたと同時に乱れ、今は完全に止まったのだ。
「お早世!」
駕籠の直ぐ外から餅右衛門の声が聞こえた。
「どうしたのですか?」
お早世が駕籠の御簾を上げて外の様子を見ると、餅右衛門と目だし頭巾を被った客の男、そして駕籠かき達がギラギラした目で、女体を見下ろしていた。この目はよく見る目だ。視線を下げると、案の定、男達は勃起していた。
「まあ♪」
お早世の目が妖しく輝いた。
「お早世、降りるのじゃ」
「あい」
男達の気持ちを汲み取ったお早世は、素早く駕籠から降りると、その駕籠に手を着いて尻を突き出した。
「どなたから始めますか?はあん、はあん」
それが待ち遠しく、割れ目を擦りながら後ろを振り返った。
「戯け、この往来でできるわけなかろう」
餅右衛門は、直ぐにでもやりたい気持ちを抑えて怒鳴った。それを制して男が前に出た。
「お早世殿、丁度良い事に我が屋敷の前である。そこではめてやろう。ささ、早く来るのじゃ」
男が全裸のお早世を抱えるように、目の前の屋敷に足を向けた。
ここから亀起道場は目と鼻の先だ。しかし、瓶之真とのお満を貰い受ける交渉、それが決裂すれば剣を交える事になる。今の勃起状態ではできない。なによりも、そこに行くまで我慢ができなかった。
「あっ…」
男の背に向かって手を伸ばし、餅右衛門が切なそうな声をあげた。
「安心なされ。それがしがお早世殿としてる間に、棚唐殿にはお久音(くね)に相手をさせるでな」
目だし頭巾から見える男の目が、自分の妻の名を出し好色の色を浮かべた。
「ほほう、奥方様をいただける」
餅右衛門はにやにやしながら後に続いた。
「あっ…」
今度は駕籠かき達が切なそうな声をあげて、餅右衛門の背に向かって手を伸ばした。
「ん?そなたらを屋敷に上げるわけにはいかぬ。ここで待っておれ」
身分が違うとばかりに、餅右衛門は当然のようにあしらった。
「そ、そんなあ…」
駕籠かき達はガックリ肩を落とした。
「こっちが終わったらしてあげるから」
冷たく言った夫に代わって、後ろを向いたお早世が声をかけた。無理を言って呼びつけたのだ。いつもは時間を見つけて相手をするが、今夜は到着後に相手をするつもりだった。
(うふふ、おちんぽの硬さに身分は関係ないですからね)
「本当ですか?」
「だから、もう少し我慢してなさい」
「ありがとうございます」
「うふふ、助平ねえ」
淫猥な期待に駕籠かき達は喜んだが、それはお早世自身にも当てはまる事だった。力強い駕籠かきに、荒々しく犯される事を思ったお早世は妖しく微笑んだ。