第一章-9
そんなこんなで俺達は動物園デートを微妙な雰囲気で終えた。
動物園を回り終わると雅也は奉仕作業の時間は終りましたと言わんばかりにアカリちゃんからソッコー離れ俺の元にやってきた。
「アニキ〜!このあとは兄弟水入らずで飯食いにいこう!」
雅也はベタベタと俺に引っ付いてくる。
ヒカリちゃんのダメだこいつら的な目線が痛いが気にしたら負けである。
「はいはい、わかったから離れてくれ。ヒカリちゃんもなんかごめんね…その…」
俺はそれ以上言葉が出なかった。
「ううん…誘ったのは私だし気にしなくていいよ。でも、ううん、何でもない…アカリ、帰ろ…」
「うん、ヒカリおねえ。雅也先輩!楽しかったです。翔太先輩もありがとうございました。」
ええ子やん、アカリちゃん…寄りによって雅也のポンコツなんかじゃなく俺を選んでくれれば良かったのに……
「おう、それならよかった。んじゃ、帰るか……」
ヒカリちゃんとアカリちゃんは仲良く手を繋いで帰っていった。
「さて、俺らも行くか?」
雅也に話しかけるが返事がない。
「おい、雅也?聞いてるか?」
「あ、ああ、悪い。ぼーっとしてた…あの…アニキ、ごめんね…」
雅也は申し訳なさそうな表情をする。
「何だよ急に謝ったりして。」
「だって、せっかくヒカリ先輩と良い雰囲気だったのをぶち壊しちゃったし……なんかアカリちゃんにも嫌な態度取っちゃってさ……俺最低だなって思ってさ……」
「はあ……お前さっきからどうしたんだよ?らしくもない……」
「俺みたいなのが弟で迷惑かけてるんじゃないかと思って……」
「ばっか!今さらかよ!お前がブラコンなのは知ってるし、俺の事が好きすぎるせいで変に拗らせている事も知っている!」
「うっ……そこまではっきり言われると恥ずかしいな……」
雅也は顔を赤くする。
「俺はお前がどんな奴だろうとお前の兄貴でお前は俺の可愛い弟だ!弟は兄貴に迷惑かけてなんぼだろ!だからもう終わった事は気にすんな!分かったか?」
「アニキぃ〜」
雅也が抱きついてくる。
「はい!終わり!ほれ、飯いくぞ!」
俺は強引に雅也を引き剥がして歩き出す。
「ちょ、待ってくれよ!アニキ!」
俺のヒカリちゃんという大きな魚を逃したが、弟との絆は更に深まった。
これで良かったのかな?かな?