第一章-1
俺は鏑木翔太。都内の高校に通う一年生だ。
自慢じゃないが生まれてこの方、彼女なんてできたことがないし、モテたこともない。
顔は決して悪くないと思うのだが……鏡に写る自分の顔をまじまじと眺める。
サラサラとした黒髪は肩にかかるくらいの長さで、目はぱっちりとしていてまつ毛も長い。鼻筋も通っていてなかなか整った顔立ちだと思う。
まあちょっとまだガキ臭さが
抜けきっていないのと背が少し低いことが気になるけど……。
街でジョニーズ事務所にスカウトされたこともあるんだけどなぁ〜。
「アニキ〜！朝ごはんできてるよー！」
下から声がかかる。俺の弟の声だ。
弟の名前は鏑木雅也。
中学2年生の14歳である。
身長は165センチほどで中肉中背だが、サッカー部に所属しているため足腰はかなり鍛えられているようだ。
いつも元気いっぱいで学校ではムードメーカー的な立ち位置らしい。
顔は双子のように俺にそっくりなのだが、性格や雰囲気は全く似ていない。
そして俺と全く違う点は女の子にもてまくることだろう。
小さい頃からサッカーをやってきたせいか運動神経もよく、頭もいい。
俺はというと運動神経は人並み、頭の出来も中の下といったところだろうか？
兄弟で顔も似てるのにここまで差があるとはね……神様って不公平だよねぇ……。
だがそんな弟にも欠点？がある。
それはあいつは極度のブラコンだということだ。
小さい頃はよく一緒にお風呂に入ったり寝たりしていたものだが、最近は思春期なのかそういうこともなくなった。
しかし最近になってまた急にベタベタくっついてくるようになったのだ。
しかもただくっつくだけじゃなく、体を触ってきたりするもんだから正直困っている。
ブラコンのせいか雅也は女の子に全く興味がないみたいだし、このままだと将来彼女ができないまま人生を終えてしまうかもしれない。
神様ってやっぱり意地悪だよね……。
女の子に興味有りまくりでも全然モテない俺と、女の子にモテまくりだけどアニキ命で女の子に興味がない弟の雅也。
果たしてどちらの方が幸せなんだろうか？ 朝食を食べ終えると制服に着替え家を出る。
通学路が途中まで同じだから雅也が子犬のように後ろをついてくる。