第一章-5
キーンコーンカーンコーン
「はい!じゃあ今日の授業はこれで終わり!みんな寄り道しないで帰るようにね。」
「「「はーい!」」」
先生はそう言うと教室を出ていく。
よし、帰ろうかな……と思ったその時後からポンポンと肩を叩かれる。
振り向くとそこにはヒカリがいた。
「翔太君、日曜日の事覚えてるよね?」
笑顔だが目が笑ってない……怖い……
「えっと……何のことでしょうか?」
「もう……忘れちゃったの?」
「いえ、ちゃんと覚えております……」
「そう、それじゃ日曜日10時に駅前の噴水前に集合だからね。」
「はい……」
「うん!いい返事!楽しみにしてるから!」
そう言うとヒカリは教室から出ていった。
「はぁ〜マジか……。」
俺は深いため息をつく。
雅也が素直に引き受けてくれるといいんだけど……。
俺は重い足取りで校門に向かうと、そこには雅也の姿があった。
「おっす、アニキ!待ってたぜ!」
「ああ、悪い待たせた。てか、先に帰ってればいいじゃん…」
「まぁ、そう言わずにさ!帰りも油断してるとアニキに悪い虫がつくかもしれないしな!」
てか俺に彼女出来ないのコイツのせいでもあるんじゃないか?
「はいはい、わかりましたよ。」
「それより、俺に話あるって言ってたけどなんだ?」
「ん?ああ、それは帰ってから話すよ。それより早く行こうぜ!」
「わかったよ。」
俺達は家に帰ると、俺は早速雅也の部屋に向かった。
コンコンッ
「雅也入るぞ〜」
ガチャ 部屋に入ると雅也はベッドの上で寝転んでいた。
「おーう、アニキ!よく来たな!さ、俺の横に添い寝しなさい。」
「誰がするか!それより本題に入るが…」
話に入ろうとする俺を雅也が止める。
「ちょい待ち!添い寝してくれなきゃ俺…アニキの話聞かないもん……。」
「わかったよ……全くしょうがない奴だな……。ほれ、これで良いか?」
雅也の隣に横になる。
すると雅也は俺に抱きついてきた。
「アニキー♡」
「おい、離れろ!」
「嫌だ!アニキ成分補給中!」
「意味わかんねえよ!」
「だって最近全然構ってくれなかったじゃないか……。寂しかったんだからな……。」
「はいはい、ごめんな。よしよし。」
頭を撫でながら謝る。
「へっへ〜♡許したげる♡」
調子の良いやつだ……。
何はともあれ雅也の機嫌が良くなってる今がチャンスだ。
「ところで雅也、お前今度の日曜暇か?」
「ん?別に予定はないぜ!」
「そっか、なら良かった。」
「で?なんの話だ?」
「実はだな……。俺と一緒に動物園行かないか?」
「え!?︎動物園!!︎行く!!︎」
「おお、即答かよ……w」
「当たり前だろうが!!︎俺がアニキからの誘いを断った事あるか?ないよな?」
「はい、その通りです……。」
「やったーー!アニキとデート!アニキとデート!」
「うるせえ!静かにしろよ!」
「はいはい、わかってますよ。話はそれだけ?」
「いや、まだ続きがある。実はな……後の席のヒカリちゃんと妹のアカリちゃんが一緒に行きたいって言ってきたんだよ。」
「ほう……それで?」
雅也の後ろにどす黒いオーラが…気のせいだよな?
「だから、4人で行くことになった。」
「俺…行かない…てかアニキも行かせねーし…」
「そう言うと思ってたよ……でも今回は頼む!この通りだ。」
俺は頭を下げる。
「いくらアニキの頼みでもそれは聞けないな……それにあの2人には俺から釘を刺さなきゃな…」
ちょ…雅也くん…我が弟ながら…怖いんですが…
これだけはしたくなかったけど最終兵器を使うしかないようだ……。
俺の横に寝っ転がっている雅也を抱きしめ雅也の耳に息を吹き掛けるように囁く。
「雅也〜♡大好き〜♡」
「ひゃうん!アニキ!耳はダメぇ〜!」
雅也はビクッと身体を震わせ、力が抜けたのかそのままベッドの上にぐったりとする。
追い討ちをかけるように雅也のおでこに自分のおでこをくっつけて唇と唇が触れそうな距離で雅也に囁く。
「俺がこんなに頼んでるのにダメ?」
「うぅ……わかったよぉ……。アニキはズルい…こんなにされたら俺…」
「ありがとう、雅也!」
俺は満面の笑みを浮かべた。
雅也は顔を真っ赤にして、両手で顔を隠している。
ふふっ!チョロいヤツめ!お前の面倒を14年間みてきた俺を舐めるな!
「じゃあ、日曜日の10時に駅前集合な!忘れるなよ!」
「はいはい、わかったよ。」
「それじゃ、俺は自分の部屋に帰るぞ。」
雅也の部屋を出てドアの前で深呼吸する。
ふう〜!俺のHPは今ので0だぜ……。
だが、これで雅也の事は大丈夫だ。