第一章-2
「今日はいい天気だな」
「そうだね〜」
他愛もない話をしながら歩いていると前方に見知った顔を見つけた。
あれは幼馴染みの橘結衣ちゃんじゃないか!?︎
彼女は俺と同じ高校の1年3組に在籍しているクラスメイトであり、小学校からの付き合いのある唯一の女友達でもある。
艶やかな黒い髪を背中辺りまで伸ばしており、目鼻立ちはくっきりとしているものの全体的に小作りの顔をしている。
いわゆる美少女と言われる部類に入るであろう容姿の持ち主だった。
スタイルも良く胸も大きいことから男子生徒の間では密かに人気があり、告白して玉砕した男は数知れずという噂もあるほどだ。
その噂を聞いてからは彼女に話しかけることすら躊躇われるようになってしまったのだが……。
彼女の方がこちらに気付いたようで駆け寄ってくる。
「おはよう!翔太くん、雅也君!」
そう言って微笑む姿はとても可愛らしく思わずドキッとしてしまうほどだった。
「おっす!ユイ!」
俺は満面の笑みを浮かべながら挨拶をする。
「おはようございます…橘先輩…」
雅也は俺に付く悪い虫でも見るような目つきでユイを睨みつける。
こいつ何やってんだよ……。
ユイは雅也の態度を見て少し苦笑いしながら言う。
「もう、雅也君は相変わらずお兄ちゃん大好きっ子なんだから」
「べっ別に僕はそんなんじゃありませんよ!」
雅也は頬を赤く染めて否定する。
いや、お前絶対ブラコンじゃん!
心の中でツッコミを入れる。
「ふーん、そうなんだ?」
ユイは悪戯っぽい表情をして雅也を見る。
「そ、それより早く学校に行かないと遅刻しちゃいますよ!さあ行きましょう!アニキ!ほら!行くぞ!走れー!!」
雅也は俺の手を引いて走り出す。
えぇー!ちょっと待ってくれー!
俺は雅也に手を引かれぐんぐんとユイから遠ざかる。
「あはは、2人とも仲良いねぇ。」
遠ざかる雅也と俺にバイバイと手を振るユイの姿が見えなくなると、俺は雅也に引っ張られながらも必死に声を上げる。
「おい!ちょっと待てってばー!!俺は走れないんだー!誰か助けてくれ〜!!!」
結局俺は雅也に引きづられるようにして学校に向かった。
「てか雅也…俺の高校まで来ちゃってどうすんの?お前の中学校通り過ぎてるけど?」
雅也は俺の言葉にはっと我に返る。
「しまったぁー!アニキのことしか考えてなかったぜ!」
こいつは本当に俺のことを慕っているのか、それともただ単にアホの子なのか、時々分からなくなってしまう。
「まあ、いいや。とりあえず遅刻だろうけどダッシュで学校行けよ!」
「おう!わかったぜ、アニキー!」
俺は全力疾走する雅也を見送り、ゆっくりと自分のペースで歩き出した。
「はぁ〜疲れた……。」
雅也は頭もよくてイケメンなのに俺の事が絡んだ途端にポンコツになるからな……そこがあいつの良いところでもあるんだけどね。
そんなことを考えているうちに教室に着く。
ガラガラッ
ドアを開けるとクラス中の視線が集まる。