淫魔(サキュバス)の潮吹き-1
「よくぞここまでたどり着いたな、勇者ミナト・イチジョウよ」
「あ、アンタが魔王サリマ・ダラスか?」
「いかにも、妾《わらわ》が魔王じゃ」
魔王城ダラスディアの最上階で、城の主《あるじ》は玉座に座って脚を組んでいた。
いやね、それはいいんだよ。俺は魔王を討伐するために召喚されたんだから。
だけどさぁ、聞いてないぞ。
魔王がこんな美少女だなんて。
肌白っ。
顔小っさ。
腰細っ。
髪長っ。しかも銀髪だし。
脚もきれいでミニスカにニーソ。
ヤギのような角も、一周回って可愛く見える。
「どうした、かかってこんのか?」
あ、パンツ見えた。脚を組み替えるからだぞ。
俺が悪いんじゃないからな。
それにしても何故黒じゃなくて白なんだよ。魔王なら黒だろ。
「ほほう。もしや妾に見とれておるのか?」
「あ、いや……」
「お主、これが何だか分かるか?」
そう言って魔王は、手許にあった香水のような液体が入った小瓶をちらちらと振って見せた。液体の色は赤に近いピンクで、複雑にカットされた容器が光を反射して美しい。
「これはな、『淫魔《サキュバス》の潮吹き』と呼ばれるモノじゃ」
「それが!?」
あれこそが理不尽に召喚されたのに、危険な魔王の討伐を引き受けた俺の目的だった。
淫魔の潮吹き。
それは持っているだけで、口説いた相手とセックス出来る夢のようなアイテムである。つまり、あれをどこかに隠し持って口説けば、誰であろうと拒否されずに一発ヤレるということだ。
さらにその名の通り、淫魔でさえも潮を吹いてよがると言われるほど強力な催淫効果もある。しかも中の液体を振りかけたりして消費する必要はない。
魔王が持っているから、討伐報酬として俺がもらっていいことになっている宝の一つだ。
あれさえあればお姫さまとだってヤレるし、メイドさんたちも食べ放題。この世界の女の子って皆可愛いから、町娘たちとヤリまくるのもいいよな。
「妾が今、ソナタを口説いたらどうなるのかのう」
「あー、それはマズいかも」
「妾の虜になるのも一興じゃぞ」
悪くはないが、すっごい美少女とは言え相手は魔王だ。素直にヤラせてもらえるとは考えにくい。
となるとこの状況は本当にマズいぞ。
しかし全く手がないかと言うとそうでもない。それは魔王が、自分を討伐に来た勇者である俺と呑気に語らっていることでも分かる。
「なあ、それホンモノか?」
「へ?」
「いやぁ、『淫魔の潮吹き』とか言ってるけどさぁ。本当にそんなモノがあるなんて信じられないんだよな」
「なっ! 妾の宝をニセモノと申すか!?」
「ちょっと見せてもらってもいいか?」
「なんじゃと?」
「ほら、俺鑑定スキルとか持ってるからさ。この目で鑑定させてくれたらホンモノかどうか分かるじゃん」
「妾とて鑑定くらい……」
「んー、自分で確かめないと信じないタイプなんだよね」
「よ、よかろう。ならばほれ、存分に見るがよい」
そう言うと魔王は小瓶を投げてよこした。おいおい、落としたらどうするんだよ。ちゃんとキャッチしたけど。
しかし噂は本当だったようだ。この魔王、ちょろい。
「どうじゃ、ホンモノじゃろう?」
おっと、いかんいかん。まずは鑑定っと。
俺は鑑定スキルを使って媚薬を見てみた。
・アイテム名『淫魔の潮吹き』
・説明『サキュバスの女王が絶頂《アクメ》で吹いたアレ』
・効果『口説いた相手と必ずヤレる。女は潮を吹くほどよがる』
確かにホンモノだ。説明にツッコミどころはあるが、鑑定結果なんて似たようなモンだしな。
「うん。確かに『淫魔の潮吹き』だな」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
「しかしこれって女が使っても意味ないんじゃないか?」
「そんなことはないぞ。見た目が超絶イケメンでも、下手くそなヤツがおるじゃろ?」
「そうかも知れないな。俺も経験豊富ってわけじゃないし」
「そんなのが相手でも女が使えば潮を吹くほど悦べるんじゃよ」
なるほど、女にもメリットはあるのか。
「ちなみにどんな口説き方でもいいのか?」
「うん? まあそうじゃな。回りくどいことを言うより、直接的な方がいいとは思うが」
「そうか。よし、なら魔王サリマ・ダラス!」
「ん?」
「ヤラせろ!」
「へぁ? ひっ! ひぅぅぅっ!」
可愛い声を出して玉座から立ち上がった魔王は、いきなり短いスカートをたくし上げてパンツを下ろした。そしてこちらに背を向け肘置きに手をかけると、むき出しの尻を突き出してきたのである。
「にゃ、にゃんじゃこれぇぇっ!」
「おお! 本当に効いた」