莉緒と達也 -見てしまったその後で-(2021/11/27)-4
「あのね、達也くん。
今日はね、
予定が早く終わっちゃったのよ。」
「そう・・・だったんですね。」
達也は半ば呆然としながら、
莉緒が拭き取る様子を見ている。
「うん。
驚かせるつもりはなかったのよ。
本当よ。」
「・・・はい。
それは分かってます。
大丈夫です。」
「そう言ってくれて助かるわ。
それにしても・・・、
これ・・・、
なかなか拭き取れないわね。
特に毛のところ。
シャワーで落とす?」
「そうですね・・・。
シャワーがいいかも・・・。」
「そうよね。
私が驚かせちゃったのが原因だから、
私も手伝うから。」
「え?
そんな、いいですよ。
大丈夫です。」
達也は顔を赤くしながら首を振った。
「もしかして、
恥ずかしいの?」
「それは・・・、はい。」
「気持ちは分からなくもないけど・・・、
達也くんが小学生の時に、
よく一緒にお風呂に入ってたじゃないの。
その時、私が洗ってあげてたでしょ?」
「そうですけど・・・。」
「それに、
ついさっきは、
すっごいところを私に見られてるのよ。
今さら恥ずかしがっても、しょうがないわ。」
莉緒は「すっごいところ」を強調して、
意識的に明るく話した。
「そうですね、
それは確かに・・・。」
達也が苦笑いする。
「そうよ。
達也くんも驚いたでしょうけど、
私だってびっくりしたのよ。
だって、まさか・・・、よね?」
「そうですね。
僕も、まさか、でした。」
「まあ・・・、
そこはお互い様ってことにしない?」
「そうですね、はい。」
「後始末というか・・・、
色々と手伝わせてよね。」
「え?
色々?」
「そうよ。
色々。
さ、お風呂場に行きましょう。」
莉緒は達也の背中を押して、
浴室へと向かった。
* * *