過去から彼女(最終話)-6
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杭打ちされる三度目の交合は狂ったビートを刻み続けていた。
天井向いた陰門目掛けて狙いの主軸に、上から叩きつけられる女体餅はスッカリ出来上がって、だらしなく啼き叫ぶばかりの痴態を演じている。
「あっ、ああぁ〜、あぁ〜、くるぅ〜! くるぅーよー、おおォッ」
それが「(アクメが)来る」なのか「狂う」なのか、たぶんサエは自分でもわかっていないことだろう。それでもサエが女の悦びを感じて気持ちが良いのなら、きっと良いことだったろう。何もかもが具合がよく、玲は玲で性悦の酒に酔ったような鬼気迫る勢いだ。
ぺったんぺったん、ずちょんずちょん。
止められないし止まるはずがない快楽永久機関の有様だった。
「ヒッヒィ〜〜! ああ〜、刺さるぅ〜! 太いのが刺さってるの、ンああぁ〜」
サエは小麦色の肌を朱に染めて開花させながら、牝の心央に突き刺さる剛直の情けに無我夢中で耐え忍んでいる。
しかも両手でV字に開脚して、自分から蹂躙されるために女の弱点を差し出している。
すらりとした量感のある太股を支える手で、己自身の女悦スイッチを捏ね回し、貪欲なまでに性の愉悦に溺れている。
「ああっ、見てよ玲! クリトリス弄くってきもちいいの、自分でオナしておかしくなるの、チンチン固いのと一緒にしたらっ、ううぅぅ、バカになっちゃうッ!」
告白の言葉は呂律が廻らず、喋っている文法が軽くおかしくなっていた。
垂直に打ち下ろされるピストンのたびに乳房が弾んで揺れるのは、どれだけ形が整って固かろうが、しょせんオッパイはオッパイだからなのだろう。
「ううっ、あっ、あっ!」
玲の反復動作のたびにベッドはギシギシと軋み音を立てる。
そのベッドの縁のフローリングには、二度目に牝犬のように後背位に貫き犯された射精と姫汁分泌の遺留物が、冷えゆくままに情交の臭いを放っている。まだ部屋の空気中には背後から煽り立てる尻肉果実の打着音と出し入れされる水音の名残までが、薄れゆく反響のように漂い残っているのかもしれなかった。
三度目の結合の現在には、女体はとっくに熱くなりほぐれ切って、少しばかりの責めの都度に簡単にイッてしまうような状態だった。さながら入れ食いするように半強制されるアクメをキメている。それは卑劣なまでの絶頂マッチポンプだった。
「はああ、アアア、イッちゃう、イッちゃう、またダメ、イクッ! イクッ! 来ちゃうッ! うンあ、イッてるからぁ〜」
サエの悲壮な口ぶりからして、何度も絶頂してしまっているようだ。
それでも少しばかり小水の潮を噴く姫貝には、虐めのような攪拌が荒れ狂っている。
ずぷ、ずぷ、ずっぷ! ずっぷ! ずっぷ!
姫餅を捏ねる肉太鼓の音色は残酷なまでの淫猥さだった。
サエは両手で玲の首にしがみつくけれども、それでピストンが止まるわけでもない。
「あっ、ばか、ばかぁ〜、玲のばかぁ〜、ああああぁっ、飛んじゃうっ!」
とっくに結合部は愛蜜液塗れで、玲のペニスはエクスタシーを感じ取っても、それで動じることはない。真っ白に焼き尽くすまでは。
「ふっふっ、うっ、ううぅ! 待って、もう無理、休ませてッ! 飛んじゃうからっ、ちょっと待って、止めてよっ、怖いッ! 止めてえッ! うぐっ!」
連続アクメに苛まれ続けた魂は急に飛翔感で眩暈を感じた。
ついに気を遣りかけたサエは、それでもリズム感のある振動で現実に呼び戻される。
その瞬間はまるで仮死から蘇ったような混乱だった。
「あっ、あふうっ! ふっ、あぅッ! かはっ!」
目を大きく見開いたサエはとうに許容量の限界を超えてしまっている。
まるで壊れてしまったかのようだった。身悶えした全身にブルブルブルっと引きつけのような震えが走って、噴水がピュッピュと飛び散った。アクメに絶頂痙攣する背筋がゾクゾクしてチンコが腹の中から溢れて頭にまで精液が流れ込んでくるようだった。
「ううわあぁっ! やァめろよっ、よせってんだよ、このヘンタイッ! ううあああっ!」
彼女は突然に跳ねるようにして、玲の顔面を拳固で殴り飛ばしていた。
瀬戸際の防衛本能のようなもので、考える前に手が動いてしまったらしい。
さらに膝で跳ね除けられた玲はわけがわからず目を白黒させるばかり。一方のサエは追い詰められた瀕死の牝獣のように、険のある目で「フーッ、フーッ」と嘆息している。
「うううっ、最低! もう辛いんだから、アンタ優しくしなさいよっ! 気でも狂うか、死んじゃうかと思ったじゃない!」
サエは気が昂ぶって泣き出しながら、シーツの上に僅かなアンモニア臭のする小さな水溜りを零してしまう。終わりのないオーガズム地獄でついに快楽が苦痛と同じになって、身体がいうことをきかなくなって失禁してしまったらしかった。
それから蕩けた顔で肩と背筋を震わせ、余韻だけでもう一回アクメしてしまっている。
彼女が落ち着きを取り戻すまでに二十秒はかかっただろうか。
「はぁ。ごめん、あんまりイキすぎて苦しかったから。死にそうだったのよ、男にはわからないかもだけど。玲、殴ってごめん。頭がおかしくなりそうで……」
「今日はもう寝ようか?」
玲は本懐に微笑んで、サエの頭を胸に抱き寄せる。
それでも二人が止めるわけがない。
しばらく抱き合って眠ったら、性懲りもなく二日目を始めるのは目に見えていた。
サエは横になって背中とお尻を押しつけながら、まだ勃起している玲に言った。
「寝てる間も挿入れてていいよ。でもあんまり動かないでね。玲の形、身体に覚えさせて」