過去から彼女(最終話)-4
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キスすると、サエは急に女らしく慎ましげに身を委ねてくる。
運動で鍛えられた筋肉質でスリムな身体は、それでもまぎれもない女体だった。
「あーもー、本気で離したくなくなりそう」
もしも以前に地下鉄で出会った別のサエとの仲が許されるのならば、迷わずそうしただろうし、このサエだって同じだった。けれども玲にとって現実のサエは歳の差で隔てられた義母のような存在で、思慕こそあれども添い遂げる相手になりえない。
以心伝心なのか、サエは玲を観察して呟く。
「すごいギラついて悔しそう」
「そりゃ悔しいよ! サエさんが会ったこともない親父なんかに」
それこそは玲の本音だった。
そんな態度から心意は如実に伝わったらしい。
サエは胸をときめかせて、感動的に嬉しげな笑顔を咲かせて頭を肩にぶつける。
「そんなこと言わないで。今は私、玲だけのものになるから」
くびれた腰を抱き寄せると、サエはトロンとした目元で喘ぎながら言った。
「ありがとね。こんなの、初めてかも。あなたとは、最初からずっと結びついていた気がする。リクのことも愛してたけど、本気で好きになったのは二人目だわ。まさか会ってたった一日でこんな気持ちになるなんて、思ってなかった」
直観でお互いに「相性が良い」とわかる。身体の具合もきっといいはずだった。
思わしげな目線を見交わしながら、二人にはエロスの予感と期待しかない。
悩ましげでしおらしく、サエはベッドに身を投げた。
ふわりと体重でシーツがへこみ、防御を解いた彼女を浮かび上がらせる。
「どう、私って、そそる女でしょ?」
サエは誘惑のウインクしながら、片足を持ち上げるようにして、濡れた女陰部を晒す。
大股開きの開脚セクシーポーズで全力挑発するのだった。
「どうせ妊娠しないんだから、ナマでいいよ」
少し考えればわかることだが、この世界のサエには子供がいない。つまりこの過去のサエが玲とこの場とこの機会でどれだけ乱行に及ぼうが、妊娠の可能性はないということだ。
しかし本当にそうだろうか?
一抹の不安と期待を抱いた玲は言った。
「そうかな? もしかしたら未来が変わるかも。こっちの世界のサエさんに子供がいるようになるとか」
「だったら、やってみなさいよ」
サエが挑むように微笑むものだから、もう玲にも退く気はなかった。
ぐっと持ち上がった片足を肩に担ぐようにして、もう片方のサエの腿を両膝の間で押さえつける。「く」の字に開かれた女体の中心に、横斜めに角度をつけ、一気にズブリと抉り込んでいた。
「あふっ! ううっ!」
潤い十分の女芯はいともたやすくニュルリと貫入を許したが、そうかといって挿入された女が平気であるわけもなく、敏感に潤んだ秘裂部分へ割り入る侵略は痛烈な衝撃をもたらしたようだった。
「ふっ、はっ、お、おっきいっ!」
サエは若い姫筒の絞まりの良さゆえに、自分でかえって余計にそう感じるのかもしれなかったけれど、それでもリクと日常的に交わっていてから何年も経っていない。おそらくはリクよりも玲の方が、僅かながらにサイズが大きいらしい。
グイッと奥まで押し込むと、サエは苦しげに喘いだ。
「おっき、おっきよ、破れちゃいそ」
言葉とは裏腹に、突入した肉銛を迎え撃つ姫肉の愛は苛烈だった。抗うような胎内の弾力と吸いつくような締め上げは、日頃から鍛えられた身体だからこそだろう。若い盛りである上に情交慣れしたサエからすれば、日照りに身体が飢えていたのだとしか思われない。
うっかりすると挿入を押し出されたり、捻り潰されそうにすらなる。
(すごい! これがサエさんの若かりし全盛期)
玲は劣情の闘争心に火がついたようになってしまう。なまじっか優しく抱きとめられる安堵感よりも、男を焚きつけて終わりなく不屈に挑戦させるような、ほとんど戦闘的なまでに生命感の溢れる女の身体だった。