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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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過去から彼女(最終話)-2

2
「なんか、小っ恥ずかしいよね!」

 最後の一枚までを脱ぎ捨てたサエは、惜しげもなくカモシカのように引き締まった裸体を晒す。どうやら玲をリクの代用物とでも思っているのか、初々しくもどこか慣れた調子なのが玲には妙に悔しい。

「玲は、脱がないの?」

 サエはからかうように急かしてくる。
 玲は脱衣しながら視姦していたが、そこはサエも同じであるらしく、何度も目が合ってしまう。まだ二十にもならないはずの彼女は案外にスケベな眼差しで、愉快そうにジロジロと目を凝らしているのだった。
 罪には出来まい、女にも性欲や男の身体への興味はある。

「あなたのは、リクとどう違うのかしらねえ?」

 ジョーク混じりに挑戦的な言葉を投げるサエは、まだ歳が若くて自分の肉体美に自信があるためなのか、僅かに恥じらいながらも堂々として、誇らしげですらある。その肌にあの痛々しい傷はなく、今の時代と世界の彼女のような気後れしたような様子もない。
 裸のまま腕や肩を伸ばしたり廻したりし、全身に生命と躍動感が漲っている。
 全くもって小気味よいほどの張り切り具合で、翳りのない表情は活動的な精彩に溢れている。すらりとした足には程よい筋肉で流線美を浮かび上がらせ、その官能的で躍動感のある筋は無駄な肉のない脇腹や腹筋のラインに繋がっているのだった。大きすぎない乳房は煮詰めたプリンのように弾力固く盛り上がり、繁みは若草のように湿っているようだった。女の香りも刺激的で新鮮味のある汗と酸っぱさが熟年の彼女と違うオーラを醸し出している。逐一に手馴れて自信ありげなのが小憎らしい。
 とっくにサエはやる気マンマンで威風堂々たる物腰だった。

「もうこの世界の中年の私と経験あるって言ったってさ、どうせ大人の女にママみたいに甘えて、赤ちゃんプレイでもして貰ったようなもんでしょ?
 別の時間線の私とだって、チョイとアソコ舐めて味見しただけじゃないの。そんなんだけで私をわかった気になろうだなんて、そんなの生意気だわ。ちゃんと全盛の本気を見てから言いなさいよね?」

 たしかにこの目の前のサエは、少し前に地下鉄で遭遇した同年代の彼女と同じ人間でも、性格が決定的に違う。既にSEXに慣れているのは明白で、あの地下鉄で救った彼女とはまた別物であることは、こんな言動と雰囲気だけでもすぐにわかる。
 しかも彼女をこんなふうにしたのは、他ならぬ自分の父親のリクなのだった。

(畜生、親父め!)

 会ったことすらない父親を、玲はこんなにも恨めしく悔しく思ったことはない。

(サエさんとどれだけ)

 彼の母親である異母妹の少女アヤとの近親相姦だけでなく、こんな若い時分のサエまでを同時に我が物にして、短いながらにも男冥利に尽きる人生だったことだろう。しかも孕ませたアヤと全盛の恋人のサエを置き去りにして逝くとは、不可抗力の夭折とはいえ自分勝手にも程があるというものだった。

「う」

 近寄ってきた裸体のサエにたじろぐ隙もないままに、触れられた感覚に呻く。
 サエの手は掬い上げるようにいやらしく、玲の隠しようのない屹立を捕らえている。

「めっさ固くしてる」

 ニヤニヤと笑うサエはさわさわと撫で回し、きゅっと膨れた亀頭を握った。柔らかな掌の抗いえない快楽で、嫌でもビクビクと蛇のたうってしまう。
 裸の肩をぶつけながらサエは前哨戦の勝利感に顔を輝かせるようだった。

「これ、気持ちいいんでしょ? フフっ」

 まるで耳でも摘むかのように、そのまま陰茎を掴んで歩き出す。
「どこへいくの?」

「シャワーとトイレ。途中でお漏らししたらお仕置きだからね」

 力に満ちた乙女の手が、まるで飼い犬のように急所を引っ張っていく。その冗談めかした「お仕置き」という言葉も、あるいは淫靡な真意を孕んでいるのかもしれなかった。子のサエは手馴れている上に容赦がなく、それだけに行動の予測がつかない。


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