酩酊黒猫-2
なんて身勝手なんだろう
彼女の肌に自分の舌をのせたりして
押し込む度に僕は後悔を繰り返して
いつかほんとうに腐っていってしまうんじゃないか怖くなった
いいや、それもまた、本望
何も失ってはいない筈
寧ろ何かを得た筈
だのにあたまを喪失感が支配していて
そうか得るとは失うことなのだと気付いた
終わった後で背中を向けた
ごめんと言おうとした
けれどそれは喉でとどまる
僕はごめんだなんて思っていなかった
彼女はうわ言のように男の名前を呼んでもいた
懲りない女だと思った
そんな記憶早くなくなってしまえばいい
やさしく抱かなければよかった
一番の後悔だ
ゲロを吐いた
少し泣いた
熱を出した
興奮した挙句に、何かを無理矢理
そんなひとがいま目の前に
どう思う
それだけ想われていることをきみはどう思う
こんなに莫迦だ
酷く我が儘だ
もはや病気だ
だのにどうして首を振る?
どんな日にも夜がくることを知る
僕は湿ったベッドシーツを洗濯して部屋を出た
あの道路にはまだ黒猫が倒れている
早く起き上がればいいと思う
誰かが可哀相、だなんて安っぽい感情抱いてしまう前に
でもただ死んだ猫には無理な話のようだった
僕は虚しさと空しさに包まれて
とてつもなく眠りたいと思った
そのまま歩いていると静まり返った公園へと辿りつく
鎖が黒くなったブランコに乗り
ゆらりと揺られながら瞼を閉じた
苺ジャムに溺れる夢
ゆっくり落ちていきたいのに
ひとくくりには出来そうにもない僕の中には
また別の僕がいる
それは随分賢くて冷静なひとだ
眠りたいあたまをぎゅうぎゅうに縛り付けて
なかなかそれを許してくれない
ああ
僕は思う
ほんとうに馬鹿なことをした。
それでもあの時掴んだ腕を
切り落としてしまいたかった
温もりの残るそれを
枕のようにして
どう見ても楽にはなれそうにもないから
一緒に苦しんで頂きたかった
ここまでくると僕も立派な困ったさんか
もしくは少しいかれた変態だろうか
けれど
酒ではない何かに酩酊した僕はきみに何をどれだけすれば好いてもらえるのかすら全然分からない。