お手紙-1
今日こそこの手紙、渡さなくちゃ…。………………私は毎朝同じ電車の車両の中にいる、あの人に恋した。私の高校の近くにある高校の人。背をぴっとのばしていつものドア脇に立っている人。
もう見て憧れているだけなんて嫌だったから、その人へ手紙を書いた。自分のメアドも書いた。書くにも腕が震える程緊張した。
今日こそ渡そうと思ったの。
今までの間ずっと、怖くてチャンスを逃してきたから。
私の前を通り過ぎていくたび、何度呼び止めて手紙を渡そうと思ったことか。
そのたびできなくてただあの人のきれいな後ろ姿をうらめしく見てきたことか。
こんな自分に決着つけるためにも、今、この瞬間、私はあなたに手紙を渡そう。
深呼吸して、早足で電車を降り歩いていくあの人へと駆け寄る。
トントン
「すいません。」
「はい?」
意外そうな顔で振り向くあの人。低い声。
「…これ、読んで下さい」
押し付けるように渡す。
「え…」
驚いた表情。まんまるになったあの人の瞳が次の瞬間笑顔でほころぶ。
「ありがとう。じゃあね。」
笑顔のまま、いつもの早足で行ってしまった。
…でも、いつもよりその背中はゆるんでいた。
友達ゎ、ここまでしか教えてくれなかったヶド、ウチ、きっとその人ゎ後でメールをくれたんじゃないかなって思う。今時、こんなコトする高校生なんて幼稚過ぎだと思ったケド、その友達、すごくきまじめで臆病だヵラ、彼女なりにかなりの勇気が必要だった。そんな経験、したことある?