暗黒司祭とカリーナの対決-8
10
その晩にじょるじゅは血のようなワインを飲みながら、「ランスの大聖堂」なる古い小冊子を暖炉の火に投げくべた。それは昔に「呪われた思想家」と呼ばれた男がまだ純粋だった頃に著したもので、彼には失われた追憶と郷愁を思い起こす気に入りの品でもある(大昔の遥かな未来に、あのオルペウス号の鵺から借りてそのままになっていたのだ)。
それはもはや彼の進む「暗黒の街道」には不要のものだった。
薄暗い古風な部屋の壁には一枚の写真があり、そこにはあのオルペウス号の鵺の装備と同じような、未来の金属甲冑を着た男たちの、セピアに色褪せた集合記念写真が飾られている。そのすぐ脇の、壁から生えた飾り戸棚の高い最上部には女性や子供のポートレートや古い仲間らしき集合写真。その横には小さなジュエリーケースと、透明なケースに入った、煤け壊れて二度と身につけることのない上級戦士章も。
思い切り吸い込んだ少女のパンティの甘酸っぱい匂いは、至高に麗しく感じられた。
(「偽オルペウスのゲーム」完)