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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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影武者ドッペルゲンガー-5

6
 二人はしばしチラチラお互いを見合っていたが、先に口火を切ったのは莉亜の方だった。

「ほうほう。あなたってさ、そういう不純な目的なんだ? 最初っからそういうヤラシイ目で、私のことを見てるの? へー、ムッツリだねー?」

 ついつい莉亜は自分の以前の妄想をちゃっかりと棚上げしつつ、取澄ました三白眼まで作り、蔑むような眼差しを向けて刺さずにいられない。
 二人の莉亜はパラレルの同じ人間とはいえ、それでも「別々の女の子」なのだ。
 足を踏み出して距離を詰め、くっと挑戦的に顔を近づける。

「まさか私のこと、ただの「身代わりのダッチワイフ」のつもりだった?」

 その怒りはからかい混じりの口調ながらにも半ばは本物である。
 いかに莉亜が彼の知る彼女と同じ人間で、しかも自分の望みで横から割って入った事情はあるにせよ、それでも譲れない心理的な一線というものはある。
 パラレルワールドを跨ぐ、微妙な三角関係であった。

「うう」

 黙って返答に窮してしまう少年、莉亜はその耳を摘んでクイッと引っ張った。言葉に詰まるリョウに、彼女は改めて釘を刺しつつも水を向けてみる。

「でもさァ。私は私なんだから、そういうつもりで真剣にやってくれなくっちゃ。私からしたら、あなたは初対面でボーイフレンドの候補なだけなんだよ?」

 武士は食わねど高楊枝、彼女にだって女としてのプライドというものがある。

「やっぱり莉亜は莉亜だ。面倒な性格のところまでソックリ」

 彼女の思惑を知ってか知らずか、彼女が同じ莉亜であると納得しているリョウ。言っている「面倒」という台詞とは裏腹に嬉しそう。
 もちろん、パラレルワールドの同じ人間なのだから、見た目の容姿や容貌だけでなく、思考や行動のパターンまでがほとんど同じであるに違いなかった。
 だから莉亜はもう一度、人差指を立ててまで強く言わずにいられない。

「兎に角! 私は私なんだから、そのことだけはちゃんと覚えといてよね? あなたに「レンタル彼氏」みたいなことさせといて、こんな注文までつけるのはワガママかもしれないけど。こっちだって、けっこー切実なんだから」

 すると少年は今度は割合に素直に頷く。
 だがそれもとっくに習い性なのだろうか?
 きっと彼の頭の中では、二人の「莉亜」が漠然と半分くらいまで一緒くたに混ざってしまっているのかもしれない。

(どーしたものかな?)

 ホントにこれでいいのか、というふうにも思う。彼はこの世界の彼女にとってこそ「宝物」なのだから、いくら本人たちが承諾していても、どこまでやってしまっていいのかは判断に迷うところもある。こちらの莉亜からすればせいぜい(特別な因縁や因果があるとはいえ)「レンタル彼氏」でしかないのだから。

(だけどこの世界で「精気」を貰えば、私は長生きできるかもしれないとか、あの眼鏡の車掌ちゃんが言ってたっけ?)

 それならメリットがないわけでもないが、やはり三人分の気持ちは大切にしたかった。
 莉亜は控えめに願い事をリクエストしてみることにした。

「リョウ君。とりあえず、どこかデートに連れて行って」


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