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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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夢と潜在願望-2

トイレは病室を出て角を曲がったところにある。
 途中で誰にも会わず、近くにも人はいないようだ。
 そしてドアの前で下ろして貰って中を見れば、誰もいない。
 莉亜は追加のリクエストを思い切ってみた。

「中まで。付き添いして、不安だから」

 わけもなく不安になるのは病勢が悪化したときにはいつものことだから、あながちに全くの嘘ではなかった。けれども甘えたい、誘惑したいような、怪しい気分もあったとは自省してしまう。

(何言ってるんだろ、私は)

 我ながら情けない限りだった。
 病気のせいで気遣われているのを利用して、幼馴染の少年を巻き込んで、暗に誘惑してでも自分に縛りつけようとしている。だが彼がいなくなったら生きていけなくなるようにさえ感じているのだ。
 女子トイレの中にまで支え歩きで付き添って貰い、そのまま洋式の個室の中にまで引っ張り込んでしまう。

「狭いよ」

「いいの。付いてて」

 とうとう見られている前で片腕で彼に掴まりながら、パンティを引っ張り下ろす。入院服の裾をまくって、下半身やお尻までを晒してしまうのだった。
 莉亜は体調が悪いこともあって頭が廻らないのは事実なのだが、そうは言っても確信犯には違いない。彼に捨てられるのが怖いから、こうして看病を理由にサービスや誘惑してしまうし、それを心の何処かで楽しんで興奮している「牝」がいるのかもしれない。
 どんな形であっても、彼が自分のことに興味を示してくれるのが嬉しい。
 こうして特別に恥を晒すことに愉悦さえ感じてしまうほどだった。

(これじゃ、どっちが変態なんだか)

 ジョロロと情けない水音で放尿し、カラカラ巻き重ねたトイレットペーパーで恥部を拭った。やたらと感度が高くなっていてチリチリした甘美な電気が疼くようだった。

(ここでこのまま私がオナニーでも始めたらどんな顔するだろ?)

 その間ずっと、ドギマギして目のやり場に困る彼を密かに観察していた。
 最後のウォッシュレットがちょっと長かったかもしれない。
 しかも照れ隠しの発言で墓穴を掘ってしまう。

「お風呂のシャワーみたいで気持ちいいから」

「そんなところにシャワー当てるの?」

「汗とか、溜まって気持ち悪いからよ。変なこと考えないで」

 莉亜はつい言い訳するような口調になってしまう。

「ふうん」

 寝汗のせいで不快なのは事実でもある。
 さらに思いつきでもう一つお願いしてみることにする。

「そうだ、あとで背中拭いてくれる?」

「いいけど」

「じゃあ、お願い」

 股間を洗うビデ水流を切って澄ました顔を作るのが一苦労だった。
 座った姿勢から抱き起こして貰って、そのままもたれかかる。背後の個室ドアに押し付けるみたいにして、たまらなくなってついにキスしてしまう。少年は驚いてこそいたものの抵抗するでもなく、かえって優しく抱きしめてくれる。
 彼女にとって、たぶん彼にとっても、最初のキスだった。
 密着した下腹部で彼の股間の「牡」が本格的に固くなって反応してくるのを感じても、莉亜は身を離そうとはしなかった。こんな狭いトイレの個室で二人きり、彼の見ている前でパンティを下ろしたときから薄々とは感づいていたのだ。

(ああ、私って「汚い女」)

 莉亜は幸福な憂鬱と自嘲に耽りながら、目に涙が溢れてきてしまっていた。
 そして目が覚めたら激しい尿意のせいで風情も何もかも吹き飛んでしまったけれども。


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