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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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夢と潜在願望-1


 その晩の夢で、莉亜はだるさと尿意に苦しめられていた。トイレに行きたいのに力が入らなくてベッドを立てないでいる。

(あうう、漏れちゃう)

 けれども都合も良く、お見舞いの親しい男の子が傍にいた(莉亜は誰か知らなかったが)。
 夢の中で莉亜はごく自然にその未知の少年に心を許していた。

「ねえ。トイレ」

 ちょっと照れたような恥ずかしそうな小声で告げる。
 本音とすれば出来心がなかったといえば嘘になるかもしれない。

(コイツだったら、いいや)

 そんな腹積もりがあった。
 誘惑したかった。繋ぎとめたかった。特別に恥を見るのを許したかった。
 けれど、事の成り行きがおかしかった。

「立てない? 尿瓶とか」

「ないわよ」

 少なくとも今日のところは。
 考えてみれば、病室のどこか(たぶんベッドの下あたり)にあった気がしなくもないけれども、あえて教える気になれない。流石に恥ずかしすぎる。
 すると高校の制服姿の彼は鞄から水筒を取り出す。

「はい」

「?」

「もう空だから」

 どうやら、彼の水筒を尿瓶の替わりにかしてくれるつもりのようだ。

「汚れるから」

「いいよ、そんなの」

「それだと新しい水筒買わなくちゃいけないでしょ」

「僕専用だから別にいいけど。莉亜だし」

 そこで言葉に詰まる。
 ヘンタイなのか純愛なのか、恥らって喜ぶべきなのか怒るべきなのか。
 莉亜には判断がつきかねた。

「連れてって。エスコートしてって、言ってるの」

 ほっそりとした手を、最近に厚みを増してきた彼の肩に伸ばす。ようやく意図を察した少年は腋の下に腕を差し込んで抱き起こしてくれる。

「漏れそう。優しくしてね」

 満足と安心感でつい甘えた情けないことまで口走ってしまう。そんな莉亜のさりげない言葉は思いもよらぬ効果をもたらしたらしい。
 てっきり肩をかりて歩くつもりだったのだが。

「え」

 わけがわからないうちにお姫様抱っこされてしまっているのだった。
 本能的な流れで少年の首に掴まりながら、もしサエや看護婦に見られたらと思うと照れくさくて仕方がない。けれども嬉しくて頭が朦朧としそうだった。

(これで行き先がトイレなんかじゃなかったら)

 つい花嫁姿のバージンロードのことを考えてしまう。もしそうだったら最高だったろう。

「腕、疲れない」

「大丈夫。莉亜は女だし軽いから」

 それでも彼に抱きかかえられて廊下を進むのは嫌ではなかった。おまけに彼もまんざらではないようで、そのことが一番に嬉しい。


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