深夜のオフィスで (4)-8
ガタ、ガタガタッ! ガタンッ!
「……っ! おぅ……ふ……っ!」
「ん! んん……!」
ガタ――ッ! ガタ――ッ!
「ぉお……っく…………ぅ!」
「んん!……んぁ……っはぁん……!」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ、はぁ」
ガサ――ゴソ――。
「……っふぅ…………」
「ぁ……ん……んん……」
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
ガサ――ゴソ――。
「はぁ………………はぁ………………はぁ………………」
「はぁ………………はぁ………………はぁ………………」
チュ。
チュウ――。
「はぁ………………………………はぁ………………………………はぁ………………………………」
「はぁ………………………………はぁ………………………………はぁ………………………………」
チュ、チュウ――――――――――。
*
いそいそと服を着て、帰り支度を始めた様子の二人。
抜け殻となってぼーっとしている私の耳に、「ちょっと、写真はやめて」というゆきの声とシャッター音が重なり聞こえてくる。「動画も……! ねぇだめ……」。ゆきの声は相変わらずそっけなくつんつんしているが、セックスが終わった安堵感あるいは諦めからか、すでに切羽詰まった雰囲気はない。
「ゆきさん、素敵でした……」
「今日だけだから。もうしないから」
「最後にキスしましょう」
「だめ。もうおしまい」
つい今まで愛し合っていた男女にしてはずいぶんな塩対応のゆき。一刻も早く「日常」へ戻りたい先輩女子と、「非日常」の余韻をまだまだ楽しみたい後輩男子の綱引きが行われている。
「お願いします」
「だーめ。今日のことは忘れて。もちろん八年前のことも」
「キスしてくれたら忘れてあげます」
「………………」
しばらくの沈黙――キスしているのだろうか、よくわからない。
ガソゴソという衣擦れと音が続いた後、ゆきが言葉を発した。
「いつまでするつもり……?」
「あと少し……」
「もう……」
チュ――――。
「ほんとにこれで……最後だよ……」
チュ、チュウ――――――――。
「大好きです、ゆきさん」
「ん……んん……」
やがてイヤホンの向こうから、女の喘ぎ声が聞こえてきた。
少し遅れて、パンパンパンパンという肉と肉のぶつかりあう音。
愛し合う男女の切ない息遣いが、深夜のオフィスにいつまでも響き続けた――。