大帝国重工総帥-1
信子は朝から忙しかった、お任せパックと言われてどのような内容か全くわからず、
一応、衣類の整理とキッチン用品などの小物をダンボールにまとめていた。
午前8時、インターホンが鳴る、
「引っ越しでお伺いしました、山本様のお宅でよろしいですね」
「ハイ、お願いします」
インターホンには女性が数人映りこんでいた。
玄関のドアを開けて待って居ると、女性が制服にエプロン姿で、4名現れた、男性が一人、
奥のエレベーターホールで何か、作業を始めている。
「おはようございます」
帽子を取り、リーダーらしき女性が、挨拶した。
「本日はお任せパックでのご引っ越しでよろしいですね?」
「ええ、内容を全く知らないのですがぁ」
「ご説明します」
「お願いします」
「本日のお任せは、オプション全てアリの完全パックなのでお部屋はそのままに、
運び出す物だけ指示して頂ければ、よろしいです」
「衣類やキッチンなど、女性が中心で利用するエリアは、女性スタッフ4名で作業を行います」
「お部屋失礼します」
ダンボールにキッチン用品と書かれた箱と衣類と書かれた箱を見つけたスタッフ
「お客様はこの作業も必要ないパックです(笑)」
別のスタッフが、とりあえず詰め込んだダンボールを開封して、専用の箱に鍋やオタマ、
フォークから箸まで、次々に引き出しや、棚に仕舞う様に詰めていった。
「ご指示頂きたいのは、引っ越し先へ運ぶ物と処分する物を選んで頂きたいのです」
「処分する物かぁ〜」
「すいません、山本様は完全パックなので、今日、部屋に運び込むものか、別かで構いません(笑)」
「どう言う事ですか?」
「部屋に運び込まなかった家具や処分を迷っている家電なと全て、1か月間当社の倉庫で
お預かりになります」
「一か月の間に、処分と引き取りを決められると?」
「そうですね(笑)、ですからお気軽にお決めください」
そう言うとスタッフは信子に運ぶ予定のない物から聞いた、冷蔵庫、洗濯機、信子が言い始めると、
冷蔵庫に赤い付箋の大きい感じの物を貼った、中を開け、中身がない事を確認した。
それが終ると、洗濯機へ行き、赤の付箋を貼った、中を確認して、次、次と作業を進めた。
「ありがとうございました、これで赤の紙が貼られていない物は、全て新居に運び込まれます」
「赤の紙の物は、当社倉庫です」
「お引越しお疲れ様でした」
説明してくれたスタッフが、頭を下げた。
信子は部屋をそのままに、普段の出勤と変わらずにマンションを出た、下には男性のスタッフが、
トラック2台と引っ越し会社のロゴのバン1台が、指示を待っている様だった。
信子と入れ替わりに、男性スタッフが次々にエレベーターに乗り込んで行った。
結局、信子は普段の出社より1時間の遅れで、会社に着いた。
「おはようございます、会長、本部長」
「信子おはよう、引っ越しの手配は済んだの?」
「ええ済みました」
「どうしたの?何か問題?」
「いいえ、業者のスタッフに指示しただけです」
「三太さまの手配ならその程度でしょ(笑)」
「引っ越しって、もっと大変な疲れるイメージだったので・・・拍子抜けです(笑)」
「麗子の我がまま見たいな話しだ、その位で十分だろ」
「手配ありがとうございました」
「これで君が引っ越してくるんだ典子も私も嬉しい(笑)」
「私も嬉しいです」
「なら何も問題ないじゃない信子」
「ハイ会長」
「私はこれから本家にオヤジに会いに行ってくる」
「総帥には典子がよろしくとお伝え下さいね(笑)」
「判った、それで典子はどうするんだ?」
「信子を連れて、屋敷に戻ります、華子たちに説明もまだですから(笑)」
「そうか、二人なら上手く手伝ってくれるだろ」
「そうですね(笑)」
三太は独り、車で本家に向かった。
三太の家は、西条の屋敷を更に大きく、豪華にした屋敷だ。敷地内に本家の他に、秘書家族が住む家と、
メイドなど使用人が住む家がある。
玄関前に三太の乗る車が、横付けされると、メイドが来てドアを開けた、
「お帰りなさい三太お坊ちゃま(笑)」
「久しぶりだね曜子、オヤジは?」
「書斎だと思います(笑)」
車を降りて、メイドの曜子と立ち話をしていると、奥から銀縁メガネの少し神経質そうな
秘書の三上が姿を現した。
「お帰りなさい、三太さま」
「オヤジは?」
「総帥は書斎で朝からお待ちです(笑)」
「前から顔が怖いんだよ(笑)三上は・・・」
「すいません(笑)」
「僕は良いんだけど(笑)他のメイドが可哀想だろ?」
「三太さまに言われて、自分では努力しているのですがね(笑)」
「そうかなら、努力は続けてくれ」
「案内はいらないよ、僕が直接行くから(笑)」
「ハイ、心得ております」
三太を追わずに、三上は頭を下げた。
袋小路の屋敷は、豪華で重厚な作りだ、その重厚な雰囲気が、居心地を悪くしている。
そんななか、三太だけが、笑顔で周りの人間に話しかけ、笑うので使用人やメイドなど周りから
人気があるのだ。当然、秘書の三上も、普段は鋭く研ぎ澄まされた優秀な秘書だが、
三太の前では、笑顔が絶えない普通の秘書なのだ。
和服姿の落ち着いた美女が三上に声を掛けた、
「屋敷の雰囲気が今日は明るく感じるわね?」
「ハイ奥さま」
「三太さんが戻りましたかね」
「ハイ、今、総帥の所へ行かれました」
「本当にあの子が居ると屋敷が明るいわ(笑)」
「確かにそうですね奥さま」
「三太さんが手隙になったら部屋に来るように言ってくれる?」
「ハイ奥さま」
信子は車を降りて、周りを見上げコレが西条のお屋敷かぁ〜と驚いていた。
二人のメイド服姿の女性が、「お帰りなさいませ」と頭を下げた。
信子はテレビで見た事があるシーンだと思った。