ね、あのコのあね-2
すっかり暗くなった秋の夕暮れ、となり町のコンビニに入った私はコピー機の方を見て身体が固まった。
りどチャンとお姉さんが、コピー機を操作しているんだ。
私はふたり(特にお姉さん)に気づかれないようにまわり道でコピー機の方に近づいた。
りどチャンが原稿を入れかえて、お姉さんがコピーした紙をそろえている。
黙々とした作業が終わったようで、お姉さんがバッグの中にコピーした紙を入れた。(ごあいさつしたほうがいいよね……)と私が思ったとき、りどチャンが言った。
「お姉ちゃん…… タバコ、買ってちょうだい」
そばで聞いてた私は「ごあいさつ」どころではなくなった。(た、タバコって…… な、何言うの……りどチャン…… )
お姉さんはりどチャンをにらみながら言った。
「空き箱、ほったらかしにしないでよ。」
(あ、問題はそっちなの……?)私がそう思った瞬間、お姉さんはりどチャンを抱きよせた。りどチャンはお姉さんの肩に顔をおし当てた。
私はコンビニからこっそりぬけ出した。そして暗い道を駆けていった。
(違ってた…… 私ずっと間違ってた。お姉さんはりどチャンを愛してるんだ…… そして、りどチャンはお姉さんに、何も隠しだてすることなんて無いんだ。)
▽
数日経った朝、私はひさしぶりに教室にひとりでいるりどチャンを見つけて、そっと後ろから抱きついた。
(りどチャンのそば、いつも誰かいるもんなぁ……)
「れふサンと……」りどチャンは抱きついたのが私だってわかってる。「教室でふたりきりになるのって、ひさしぶりですね。」
私は りどチャンの髪に顔を寄せた。「うーん、りどチャンの髪から かすかにタバコのにおいが……」
私は こないだのタバコつながりで、こんないけない一言を試してみた。
「うん。誰かエレベーターでタバコ吸ったみたいで においがしてたわ。」
うむ、さすがプロの仙女。すでに対応の手引き書ができてるのね。私は りどチャンの強いリアクションがほしくて、こんな事を言ってしまった。
「タバコで思いだしたけど、タバコ吸いながらオナニーすると、すごく感じるんだって。」
「え、ええーっ?!」
りどチャンはいきなり私の手を引っ張った。私の顔がりどチャンの髪にグイグイおしつけられた。
「む……むぎゅッ……」
「あ、ゴメンね。」りどチャンの手がゆるんだ。「私、初めて女の子の声でじかに『オナニー』って聞いたもんだから、われを忘れてしまったよ……」
私はそれにこたえることが出来なかった。
(りどチャンの髪と頭皮のにおい…… すごく良かった…… まじりけない、仙女の汗のにおいだ……)