見舞い-2
昭和45年の年明け、除夜の鐘が鳴ると新聞販売所は忙しくなる。
前日までに用意された膨大な広告の折込が一斉に始まり、それが終わると配達員によって年明けの仕事が始まる。
夜間大学へ通う広田裕也もこの河合毎朝新聞に住み込んで2年になる。
「裕也君、今朝は新聞重いからハンドル取られないように気を付けてね」
あわただしく出てゆく配達員の中に裕也はいた。
地方から出てきてようやく都会の生活にも慣れて今では店主の浩一郎からも信頼を得ていた。
配達が終わると舞子は用意したお年玉を配達員全員に渡す気前のいい女将であった。
「裕也君ご苦労様、お雑煮用意さてあるから食べてゆっくり休みなさい」
和服姿の舞子は今年52歳になる、子供が無いこともあってか成人を迎えた裕也はわが子のように可愛がっていた。
また裕也も東京に出てきた時は不安であったが田舎の母とは比べようのない舞子の女性としての魅力に心奪われていた。
朝食を終えると二階の自分の部屋に上がった。
ようやく初日の出が部屋の窓から差し込む、眩いばかりの新年の朝であった。
大学は当分冬休み、この休みの期間は裕也にとってゆとりがある、学費や下宿代の心配はなく店から貰う給料も小遣いとしては申し分なかった。
都会生活も慣れてくると裕也も男である成人映画の広告の看板を見てはお気に入りの女優の映画にはこっそり入って欲求を満たす、そして夜はその映画のシーンを回想しながら自慰に更けるのであった。