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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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深夜のオフィスで (3)-3

 心の中で応援しながらふと、突拍子もない考えが浮かんだ。ひょっとしてゆきは今日、Yとセックスしていないのではないか。ゆきは私を興奮させるためにセックスしたなどとあえて嘘の報告をしたのではないか。私を嫉妬させ、夫婦の営みをより充実させるために。私のインポが治ったのもFにキスされたという報告がきっかけだったし、ありえないことではない。現に今夜のゆきとのセックスは二人とも大いに乱れ、盛り上がった。
「あのね、今日私……Yくんとエッチしてきちゃった……」
 今夜のゆきの、私の顔色を伺うようないたずらっぽい笑みが脳裏に浮かぶ。嫌われないかという不安と興奮してほしいという期待の入り混じった愛おしくなる表情だった。嘘だとすればなんと憎たらしくも可愛い嘘ではないか。

 実際イヤホンの向こうでも、Yの押しが弱くなってきたようだ。

 そもそも薄々おかしいとは感じていた。いくらゆきがYに好意らしきものを抱いていたとしても、同じ職場の後輩とそう簡単に肉体関係にまで発展してしまうものだろうかと。Zの場合のように私が強く導いたわけでもなく、Fのように元恋人でもない。単なる同僚のYは、言ってみればまったくの他人である。そんな相手に三十八歳にもなる人妻が突然キスされ、そのわずか数日後にセックスまで至るというのは、やはりどう考えても不自然なのだ。

「……だって……ゆきさん……」

 Yの口からも駄々っ子のようなセリフしか出てこなくなった。強引に迫ってはみたがどうにも陥落しない相手に攻めあぐねている。ざまあみろである。焦って強硬に迫りすぎていたし、あんな雑な攻めでどうにかなると考えていたとしたら甘すぎる。彼は真っ直ぐではあるかもしれないが人妻の心の機微には通じていない。要するに若いのだ。百戦錬磨のZやFでさえ、ゆきを口説くときは細やかな気遣いを重ね、人妻が夫を裏切るというとてつもなく高いハードルをあの手この手で下げようとする。あるいはハードルの手前に小さなステップを何段も配し、物理的にも心理的にも一線を越えやすいデートプランを立て、スマートにエスコートする。Yのやり方はいかにも拙速で、人妻が断る理由をいくらでも与えてしまっているではないか。

 もみ合いの声も音も消え、荒かった息遣いも落ち着いてきた。完全に小康状態に入ってしまい、すでに男女の行為が継続する雰囲気は感じられない。
「……Yくん、わかってくれてありがとう……」
 ゆきの口からついに勝利宣言が飛び出した。ありがとうは私のセリフだ。ありがとう、ゆき。愛する妻を誇らしく思う気持ちと、Yに対する優越感に満たされる。寝取られマゾとしての性癖は満たせなかったが、そんなものよりずっと大切な夫婦愛が確認できて大満足である。明日ゆきを思い切り抱きしめてあげよう。ゆきはなんのことかわからず目を白黒させるだろう。

 さて、あとは乱れた衣服を整え帰り支度するだけだ。私もそろそろ眠りにつこうと音声をストップしようとしたそのとき、Yが口を開いた。

「だって、俺とゆきさん……昔エッチしたじゃないですか?」


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