『THE ENDLESS』外伝〜光羽編死の章-1
十二時。もうSomisiaeのメンバーは誰もいない。
「暇だ…」
こんな仮初めの世界で一生を終えるには刺激が少な過ぎる。ログアウトできないという現実は確かにのしかかっている。
「外に出るか…」
しかし、あまり目立った行動はできない。なぜなら、メンバーが全員ログアウトしている間はギルドの襲撃はできないようにプログラムされているが、俺が二十四時間ログインしている今の状況ではそれも役に立たないからだ。
「B-11は確か西軍の支配下にあったよな…」
B-11は森が中心のエリアだ。中心部に近付く程強い敵が出て来る。
「強くないと物足りない」
もし俺が今ゲームオーバーになったら、現実の俺も死ぬ可能性が高い。だがそんな事はもうどうでもいい気がした。
ガサッ
「早速暇潰しの標的出現…」
念の為自分の体に防御魔法を掛ける。
「早く出てこい」
「……バレてました?」
「その声は恕庵か?何故こんな処にいる?」
「最近我々が商業ギルドに転向した事は知ってますよね?」
「当たり前だ」
「実は情報も売買しているんですよ」
「!スパイ活動か」
「敵でも味方でもない中立が一番儲かるんです」
「という事は…貴様!」
……何だ?力が入らない…そうか、これが仮ログアウトか…気が遠く……
「う…ここは!?」
周りを見る限り、俺のギルドの中のようだ。俺は椅子に座っている。
「陽が射している…朝か」
ギルドシティの時間・天候等は明石市を基準にしてある。
「…これは」
俺は机の上に一枚の紙片を見つけた。
『驚きましたよ。いきなり気絶するんですから。これからも飛雲を御贔屓に』
借りを作ってしまったみたいだな…
時計を見る。もう七時か…やっぱり暇だ。他のメンバーが来るまで何時間もある。で、土曜は明後日…
「!待てよ……」
この余った暇過ぎる時間をレベル上げに使えば、最強の名を恣(ほしいまま)にできるかも知れない…