悪党達の末路-4
猛のリハビリは、順調で日常生活程度の動きをしても手術した腹部に異常は見られず、体調に問題無いとの診断だった。医師は、順調だがと前置きして内臓系の刺し傷は通常治癒も遅いとして、今暫くの入院と激しい運動を控える様言う。
猛本人は、退屈でもう退院したくて仕方無い様子だったが美鈴がもう少しの我慢だと説得する。美鈴の両親には、毎日の見舞いは大丈夫だと言うが、美鈴がまだ忙しいので手伝いたいと言ってくれて洗濯や着替えの交換などで毎日病院に行ってくれた。久々に、孫と時間を過ごす事が楽しいらしい。
美鈴のチームも「山海文書」の案件を担当する事になり忙しい日々を過ごしていた。何度も閣僚経験が有り大弁護団擁する大物政治家と対峙する事となった。防犯カメラの映像から山海の息子を襲った犯人達の逮捕に繋がり、指示役の男も逮捕されたと知り合いの刑事が教えてくれた。
指示役の男は、大原の秘書黒川の依頼だったと自供。指示役の男から黒川から車に詳しく細工出来る人間の紹介を頼まれたと明かした。紹介した人物所有の車が山海の地元の事故死した記者達周辺の防犯カメラで見つかった事により、その人物と数人の男達が写った防犯カメラ映像発見にこぎつけ、グループの素性を特定出来た。取り調べから記者達の乗った車への細工と運転手と記者達に睡眠薬を盛った事を自供した。
リーダーの男は、黒川の依頼だったと認めた。大原と黒川の死亡により関係者の口が開き始めたと知り合いの刑事は語った。鑑識課員の内部告発に端を発した県警への本庁の査察から、県警上層部の一部と鑑識、事故を調べた捜査員の一部、運転手の体内より睡眠薬が検出されたにも関わらず検案書を改竄した担当医師が逮捕、起訴された。
県警への隠蔽の働き掛けをした山海は、自分は謀殺を止めようとしたと主張した。だが、犯罪を事前に警察に告発して防ぐ事もせず隠蔽と証拠品の破棄を指図したとして実刑は免れえないだろう。数多くの贈収賄への関わりも実刑判決が予想され、長い裁判の末に長期の懲役刑が待っていると思われた。
だが、山海は体調不良を訴え診断の結果胃癌が手遅れな程進行しておりすぐ警察病院に入院となる。余命持って半年との事だった。体力的に裁判に耐えられないとして、公判は開かれ無い可能性が高かった。美鈴は、真相が有耶無耶なまま幕が降ろされそうで釈然としなかった。
大原、黒川の関係者のあらかたの逮捕により美鈴の警護も必要無いとの判断が下された。大原や黒川の関係者、協力者は金だけの関係で有り、居なくなった今大原や黒川の報復を行う者は居ないと逮捕された関係者達が口々に語った。