俺のラブストーリー〜経過〜-1
今…何してるのかな……?あの娘はどうしているのかな……?
俺の事思い出したりしてるのかな…?
なんか…そうだったらうれしいな…
教室から空を見ながらそんな風に思った。そんな事はないと知りつつも…
俺が好きな人は近いようでとても遠い…まさに雲の上にいるような存在だった。
勉強は人よりできるし、運動神経もいい…そして、みんなに慕われる美人だ。とても人気がある。
だから、俺はあくまでも影から見ているただの人。
おそらく彼女は俺の名前…いや、顔さえも知らないだろう。
だから、これは叶わない想い…そして、誰にも知られては行けない秘密の想い…
授業が終わると俺は仲間と適当に話した後に学校を出て帰路についた。
この時間はとても好きだった。一人で自由な気分を味わえるからだ。
今は夏だから蝉が鳴いているのも少し気分を高揚させる要素の一つだ。
この帰り道はあの娘が必ず通る道がある。
時間はよくわからないが運が良ければ見る事ができるのだ。
気分が良くなるのはそれも一つの要素なのかもしれない。
だから、ゆっくりゆっくり…時間をかけて俺は帰り道を歩く。
「わ〜た〜る〜!!あんたそろそろ起きなさいよ!早く起きないとアレかますわよ!」
うるさい…誰だ?俺の安眠を妨げる奴は…?
「カウントダウン開始!10…9…8…7…6…5…4…」
何故だろう…身の危険を感じる…
「3…2…1…DEATH!!」
「ぐふぉ!」
俺の腹部に衝撃が走った。こ、これは腹に掌底…
「やっと起きたか。さぁ朝ごはん片付かないんだから早く食べてね」
と言って俺にニッコリと笑う。
「クソ!怪力め…猫かぶりやがって…」
「なんか言った!!!!?」「いえ…なんでもないデス」あれは鬼だ…人間の皮被った鬼だ…
そう思いつつ、俯せになっていた身体を起こす。
鬼…じゃなくてあの女の子の名前は中村アゲハ。
俺の大家兼同居人だ。
ここに住み始めてから約一週間。
最初は猫被っていたあいつは今では完璧に素の状態で俺に接している。
まあ俺も常に気を使われるよりは今の方が過ごしやすい。でも、朝起こす時の掌底はやめてほしい…
あと、難点がもう一つある。まあそれはすぐにわかるだろう。
「ったく…でも、起こしてもらって助かったかも…」そう呟き、自分の部屋から出た。
リビングに着くとちゃぶ台の上から異様なにおいを放つナニカの前に座った。
「はい、ご飯」
そう言って手渡されたご飯らしきものを見ながら俺は言った。
「アゲハ…お前…もう料理作らなくていいよ…」
これはすでに料理とはいえない…
普通に炊けば簡単にできるはずのご飯は変な色してるし、おそらく卵焼きだと思われるものは焦げ過ぎて炭と化しているし、味噌汁は味噌なのに色が黒い…