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「向こう側」
【ファンタジー その他小説】

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「向こう側」第一話-1

まぶしい朝日に照らされて散歩道を駆け抜ける

「おい!タロウ!おまえ走んの速いんだよ!少し落ち着け!発情期か!?」

犬相手にてこずっているこの少年の名はスグル、16歳の高校生である。

「ケンタのやろー『僕が面倒見るからこの犬飼っていいでしょ?』って母ちゃんに頼んだくせに『修学旅行で家にいないから兄ちゃん、タロウのことよろしくね』じゃねーよ!俺関係ねーだろーが!」

と、ブツクサ文句を言いながら公園の奥にある「平和の搭」に向かう。
「平和の搭」といっても名前ほどたいしたものではなく単なる薄汚れた三メートルぐらいの白い柱である。
どうしてこんなものがあるのか、どうして「平和の搭」などと呼ばれているのかということについて知っている者は誰一人としていない。ただ確かな事はそこにそれが存在しているという事である。
散歩のコースはこの柱をぐるりと折り返して家に戻るというものであるが、その「平和の搭」にさしかかったとき、犬のタロウに異変が起こった。

ふんばり始めたのだ。

「っ!おまえこんなところでうんこすんのかよ!この町の平和がうんこ臭くなるじゃねーか!!空気読め!」

スグルの言葉なんか気にもしていないかのようにタロウは自分の常務を果たすと満足げにスタスタと歩き始めた。

「ちくしょ〜何で俺がこんなことを…くさっ!」
あらかじめ用意しておいたビニールとスコップでタロウの排泄物をせっせと処理する。

「ワワン!ワン!ワン!」
タロウが何か見つけたらしくうれしそうにほえている。

「あ〜?どうしたバカ犬、かわいい雌犬でもみつけたのか?」
そう言いながらタロウのほうに歩み寄ってみると
「ん?なんだ?」
土の中に何やら光りを反射しているものが埋もれている。スコップで掘り返してみると、ビー玉のようなものが出てきた。
朝日の光がそれにはいると中で幾度となく反射を繰り返し、まるで自ら光を発しているかのごとく光り輝いている。
「何だこれ?きれーだからもらっとくか」
そうしてその石をポッケに入れてスグルは家路についた。
「だだいま〜ってまだ誰も起きてねーのかよ」
一階はまだ薄暗かった。
別にそれほどお腹は減っていなかったので二階の自分の部屋で休むことにした。スグルの部屋の大きさは八畳程度あるがふたつの勉強机と二段ベッドが場所をとっていて、動ける範囲は狭い。
スグルはその部屋の中で自分のいすに座りながら先ほど手に入れたものを上に投げてはキャッチし、また上に投げてはキャッチしていた。

「あ〜暇だな〜なんも予定ねぇんだもんな〜…
なんかおもしろおかしな事でもおきねーもんかな〜っと」

シュッ!

そう言いながらスグルは石を少し強めに投げてしまった
天井にぶつかる!そう思った瞬間

ドプン

まるで池に投げ込んだように石は天井に吸い込まれていった。
スグルはしばらく唖然として天井を見つめていたが、やがて好奇心に突き動かされ天井を調べようと体が動いた
ベッドに登り恐る恐る天井に手を触れてみる。


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