百合子2-1
チチチチッ・・・、チチチッ
遠く聞こえる小鳥のさえずる声で目を覚ました。いつものベッドにいつものように寝ている自分に安心した百合子。しかし、起き上がろうとしたときの筋肉痛を伴う重さ、両手首に残っている縄目の跡に夢ではなかったことを思い知らされた。あれから何度イカされたのだろう。あられもない声を漏らし、焦らされて、焦らされて絶頂をむかえ、弛緩する快感を何度も、何度も。思い出すだけで、自身の泉が潤ってくるのを感じる。
最後の記憶がないところをみると、失神してしまったのだろう。こうしてベッドに寝かせたのは山本なのか。百合子には縄で自由を奪われたけれど、不思議と恐怖はなかった。言葉使いや扱いも乱暴なものではなく、むしろ、大事なものを扱うような態度であったからだろうか。
(ダメよ、紳士的に振る舞っていてもやっていることは鬼畜じゃない。あんな卑怯者は絶対許さないわ)
昨日の山本の言葉責めや愛撫を思い起こし、下半身がうずくのを振り払いながら誓った。
(山本といえば、どこにいったのだろう)
重たい体を起こし、寝室を見渡すも山本の姿はない。
(そういえば山本はわたしを犯したのだろうか?)
口づけや愛撫までは記憶にあるけれど、交わった感覚はない。
(あそこまでいってしないわけないわ、覚えてなくてちょうどいいわ)
これで山本が満足してくれれば、昨日のことはしょうがない、と思っていた。
(娘、いや冷泉家を守るためだもの神様も許してくださるわ・・・・・。でもあんなに取り乱してしまって主人には・・・・・。ううん、薬よ、あの変な薬のせいだわ、あれがなければ誰があんなヤツに・・・・・)
自分に納得させた百合子は、とにかく状況が今どうなっているのかを確かめようと思った。
何も身に着けていないことに気づいた百合子は、自身顔を少し赤らめながら、どうせならとそのままシャワーを浴び、身づくろいをし一階へ降りていった。
階段を降りると、ダイニングルームから物音がする。
(やっぱり、まだいるのね)
いないことを期待していた百合子だったが、覚悟を決めて入っていった。
「やあ、奥さま、おはようございます」
「お、おはよう」
「よくお眠りで」
「あなたはずっとここに?」
「ええ、奥さまを寝かしつけたあとはここで休みました。女の一人寝は物騒ですから」
「そ、そう、それはありがとう。ではもう結構ですからお引取りくださっても」
(あんたのほうがよっぽど物騒だわ)
「いやいや、まだ旦那様がお帰りになるまでに日にちがございます。ずっとおそばにおりますよ」
「えっ、じゃあ、あなたはまだここにいるつもりなの?」
「もちろんです。私はまだ想いを果たしていませんし、クククッ」
(やはりまだ私を犯していなかったのね)
「もうあれだけ楽しんだならいいでしょっ?もう許して」
「何を言っているんですか、楽しんだのは奥様でしょう?まぁ、私もそれなりには楽しみましたが」
「たっ、楽しんだですって?あれはあなたが無理やりに・・・」
「あれっ、心外だなぁ、あれだけイカせて、イカせてってお願いされてご奉仕したのに」
(クッ)顔を赤らめる百合子
「それにここを出て行けと言うなら、私は失業してしまうから、二条家に就職活動することになりますよ」
「わかったわ、勝手にするがいいわ」
「まあまあ奥さま、先は長いんです、仲良くしましょうよ。あっ、そうだ、朝食の用意ができていますよ。私は先にいただきましたが」
焼けたパンとコーヒーの香り、昨日から何も食べていない百合子は空腹感を急に覚え、言われるまま食べることにした。
「ご旅行中は私を含め、家人には暇を出してありますからたいしたものはなく、これだけですが」
焼いた堅めのバケットに明太子クリームが塗られ、ベーコンエッグ、サラダ、コーンスープが用意されていた。オレンジジュースを飲みながら、本当は空腹のためガツガツ食べたいのを我慢し、外で振る舞うようにおしとやかにゆっくりと食べた。
コーヒーをいれながら山本は言った。
「そういえば奥さま、朝から電話が何度もかかってきております。三十分毎くらいに何度も。そろそろまたかかってくるかもしれませんよ。私はお休みということになっていますからでませんでした、旦那さまかもしれませんし」
「あらそう、誰かしら」
食べ終わった百合子は、満足げにコーヒーを飲み、昨日わが身に起こったことや、今後のことなど忘れてしまったかのようだった。
「さあ、奥さま、そろそろ始めますよ」
山本が縄を持っているのを見た百合子はうろたえた。
「なっ、何を始めるのよっ、やめなさい、こんなところでっ」
部屋着とはいえ品のよさそうな紺色のワンピースの胸の部分に手をおいた山本は、椅子に座ったままで身をよじる百合子の抵抗を尻目に、まるで指が覚えていたかのように瞬時にその先端を探り当てた。張りのよい胸を手のひらで絞りつつ、先端を指で回すように弄び、時折親指と人差し指でつまんだ。
「あっ、あっ、いやっ、あっ」
縄を置き、後方から両手で百合子の敏感な先端を責め続けた。
「あ〜ん、んっ、んっ、あっ、いやっ」
「ん〜っ、んっ、あっ、お願いっ、やめてっ」
「奥さま、やはり敏感ですね、こんなに感じてくれて嬉しいですよ」
耳もとで息を吹きかけながら、低音でささやく。
「あ〜っ、はっ、はぁっ、ん〜っ、あっ」
「もうこちらの準備もできているんじゃないですか?」
右手で百合子の股間をまさぐる。
「う〜っ、いやっ、あっ、あっ、あ〜っ」
「さあ、一度立って脱いでもらおうか」
「ダメよっ、こんなところじゃ」
「大丈夫ですよ、警備会社には電話してあるし、避客牌も立ててあるから郵便だってきませんよ」
もう抵抗する力も失せつつあった百合子は素直に従うしかなかった。
「今日はピンクのひも付きなんですね、これまたセクシーですよ、今はここまででいいですよ」