未完の恋-1-1
未完の恋-1
休み時間。
委員長は、私の後ろの席でいつものように本を読んでいる。
「井戸さん、前向いてよ」
「んー…」
スルリ
「ちょっと!眼鏡返してよ!本が読めないじゃない!」
「ご、ごめんて」
「もう!」
「委員長の眼鏡外した顔、見たくてさ…」
委員長は、私をシカトして読書を続ける。
「委員長ってさ、実は美人だよね」
「なっ!?何言ってるの!?」
「せっかく美人なんだから、コンタクトレンズにしようよ。
私、コンタクト使ってて、ソフトなのに1か月間つけっぱなんだよ」
指先で見て見てすると、委員長はのぞき込んでくる。
瓶底眼鏡越しの目が大きい。
「ひと月も?寝る時も外さないで?」
「そう。私もそれがめんどーでさ。
パパに相談したら、いいの見つけてくれて。
安いんだよ。計算したら1か月1500円以下。すごくない?」
「すごい…と思う。それなら、お小遣いで余裕でいける」
「でさでさ。
眼科で検査だけしてもらって、通販で買えばさ…」
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後日、
委員長は眼鏡無しで登校して、朝からクラスのみんなにチヤホヤされた。
席に着く委員長にドヤ顔する。
「ねー。みんな褒めてくれるっしょー?」
「ん…。どうもありがとう」
委員長嬉しそう。
やっぱり素顔のほうが美人。
「髪もさぁ、いつも三つ編みおさげじゃなくて、下ろしたほうがいいと思うんだよねぇ」
「いいの。これで」
とか言っても、笑顔で応じてくれる。
以前のようにすげなくはない。
「委員長の瞳、『はしばみ色』って言うんだよね」
「えっ?そうなの?
変だから好きじゃないんだけど…。
色が薄いから小さい頃ガイジンって言われたし、みんなより眩しいの苦手だし…」
「ううん。綺麗でとってもチャーミングだと思うよ」
「そんなに見つめないでよぉ」
あっ、赤くなった。
「ねぇ、委員長?」
「はい?」
「キスしていいかな?」
ガタッ
「落ち着いて…。放課後の話だから…」
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放課後。
空き教室のカーテンの陰に、委員長を誘った。
「う、う…」
委員長が、私の胸を押し戻す。
「ちょっとだけって言ったのに!!!
どうしてっ?なんでこんな…。べろで…」
「ごめん。気持ち悪かった?」
「…」
「私、すごい気持ち良かった。
委員長の綺麗な瞳に、私だけが映って嬉しかった」
委員長はうつむいて、本気でうろたえてる。
唇に指先を当ててる。
「だって…。口を吸うなんて…、そういうのは…」
「こないだ、
たまたま委員長が眼鏡外したの見て、いいなって思ってたんだ。
今は、委員長を独り占めしたいって思ってる」
「そんな…。だからって…」
「私、委員長のことが好き」
「えええっ!?
井戸さん!、すっ、きぃ…。なの?私のこと…」
「うん、好き。結構好き。だからキスしたかった」
「私たち、女の子同士なのに…」
「でももう、恋人のキスしちゃったよね」
「ええっ!?
わわわ、どうしよう…。私…、困る…」