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バニラプリン
【ホラー その他小説】

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バニラプリン‐主編‐-3

その日の残りの授業はなんとか乗り切った。

ただ、下校時は自然に足早になっていた。

それからあたしは就寝前に必ず?アレ?を飲む事を忘れなかった。

そう、謎の老婆から購入したあのバニラプリンという名の飲み物を…。

次の日、あたしは学校で9人の男子に告白された。

『好きだ』、『付き合って欲しい』とか、『一目惚れした』等々。

中には『俺を殺して欲しい…君の手で!』などと訳のわからない事を平然と大声で叫ぶ輩もいた。

今まで一度も告白されたという経験が無かったから、やはりどのように返事すれば良いのか困惑した。

しかし自分は今、この人達と付き合うべきでないと判断したのはきっとあたしの反射神経か。

気が付けば悉く彼等の申し出を断っている自分がいた。

全ては黒河クンに賭けよ、とあたしの本能が叫んでいたのだろう。

彼は間違いなく手強いのだが。

そしてその翌日も、また次の日も、日を追う毎に変化していくルックスとともにあたしに近付いてくる男子の数が増え、どちらかと言うと充実したスクールライフを営んでいた…と思っていた。

「おはよう。紗香」

「…おはよう」

「どうしたの? 最近元気無いみたいよ」

「…別に」

一方であたしの友人関係は、気付いた時にはギクシャクしたものに変貌していた。

(何故…?)

おおかた積み上がってきたピラミッドが、突然の地震で揺さぶられるような心地がした。

─バニラプリンを飲み始めてようやく10日が経過する。

『ホントに随分美しくなったものだ』

と言いたかった。

10日分のバニラプリンを飲み終える頃には笑って居たかった。

トップモデルと同じ服を着こなして、颯爽と街を歩きたかった。

それなのに、今はそんな気分にはなれない。

心に大きなしこりが残存していた。

(黒河クン…あたしの黒河クンは…?)

流石に校内ナンバーワンのモテ男。

彼はこの10日間、一度もあたし──高山香織に近付かなかった。

教室こそ別ではあるが、彼と廊下などですれちがう事は幾度となくあった。

その度に見つめる視線は、彼からあたしにではなく、あたしから彼へのものだった。


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