光の風 〈聖地篇〉-4
「ラファル!わぁかった!分かったって!」
カルサの言葉にラファルは一歩引いて体を放した。シッポを何度も振り、愛情表現は絶やさない。カルサは上半身を起こしラファルに抱きついた。
立てばカルサと同じくらいであろう体長のラファルは、動じなかった。頭をカルサにすり寄せる。
「久しぶりだな!大きくなってたから分からなかった。お前かっこよくなったなぁ!」
無邪気な笑顔。まるで子供のようにラファルの頭をぐりぐりと撫でた。ラファルもそれを喜んでいる。
「まさかラファルに会えるなんてな。よくオレが分かったな。」
カルサはラファルの体を撫でて懐かしい手触りを楽しむ。だんだんと遠い目になっていた。
ラファルはまるでカルサの意識を引き戻すように頭をすり寄せた。
「悪い。せっかくお前に会えたのにな。」
苦笑いしてラファルの頭を撫でた。そして何かを思いついたように目を空に泳がす。
「せ…。」
千羅と呼ぼうとしたが、カルサは声を止めた。人の気配を感じる。その方向を見つめた。
やがて視界に人影が映り、それは明らかにこちらに近付いているのが分かった。カルサの表情は険しくなる。
招かれざる客、カルサの表情が物語っていた。深い青色をした髪、守麗王のもう一人の側近・ジンロだった。
「ジンロ…。」
「そう睨むな、カルサ。」
ジンロはカルサに当然のように近付いていく。カルサの前でしゃがみ、ラファルを撫でた。ラファルは素直に身を任せる。
「随分懐いてるんだな。」
「当たり前だ。誰がお前の代わりに育ててきたと思ってるんだ?」
ジンロはラファルの体をぽんぽんと叩いた。そこにあるのは愛情だった。そしてカルサに目をやる。
「大きくなったな。」
あからさまにカルサは目を逸らした。無言で立つ、それにラファルは反応しシッポを何度も振った。
「カルサ!」
歩きだそうとするカルサを止めるように呼ぶ。カルサは無言で視線だけをジンロに向けた。
その瞳はとても冷たい。
「そこまで嫌わなくてもいいだろう?」
「ならない方がおかしい。だろ?」
カルサは睨み付けて歩きだした。ラファルもそれに続く。その場に取り残されたジンロは浅いため息を吐いた。
そして、彼の名を呼ぶ。