光の風 〈聖地篇〉-24
ラファルは体をリュナに預けた。触れるだけで手に馴染む毛並み、思わず笑顔になる。
「かっこいいだろ。」
「ええ!可愛いわ!」
カルサの誇らしげな顔をよそ目にリュナはたまらずラファルに抱きついた。ラファルは驚き目を丸くさせる。
そんな様子をカルサは笑いながら見ていた。そして告げる。
「連れていこうかと思ってる。」
愛しそうにラファルに触れる。やさしい笑顔でリュナを見た。リュナは微笑む。
「よろしくね、ラファル。」
リュナはもう一度ラファルに抱きついた。ラファルもそれに応える。カルサから笑顔があふれた。
その場所にいるだけで自然と笑顔になる。心から優しい気持ちになれる。リュナがいるだけでカルサは満たされる気分になれた。
ゆっくりとした時間。もっと触れていたくてカルサはラファルごとリュナを抱きしめた。
楽しそうな悲鳴が響く。カルサは何も言わず抱きしめていた。ラファルとじゃれあっていてもカルサの声がしない。リュナは不思議そうに問いかけた。
「カルサ?」
カルサは頷き黙ったままだった。思わずリュナとラファルは目を合わせる。
「幸せだ。」
消えそうな声で囁いた。かみしめるように出した言葉はカルサの本音。
聞き間違いだろうか。いや、そんなはずはない。そうであってほしくない。
「リュナ、ラファル。幸せだ。」
再確認するように出した言葉はカルサの気持ちを確定した。リュナは思わず涙ぐむ。
なぜだろう。嬉しい時は笑えばいいのに、彼女は泣くことしかできなかった。止まらなかった。
一度はないといわれた未来に、今自分達は生きている。諦められない想いが未来を呼んだのだ。
幸せだ。
彼が笑うことで皆が幸せだ。想いが生んだ未来に可能性を感じずに入られない。
こんな日がくるとは思わなかった。あるのは出会いと別れ。継続、未来なんて無用なものだと思っていたのだ。
動きだした運命はいつしか歯車がずれて違う道を描きだした。その道を歩き続けたい。未来をこの手にしたい。
それを実現するため、彼らは再びシードゥルサに戻る。あいさつをするために謁見の間を訪れた。
「そう、帰ってしまうのね。淋しくなるわ。」
残念そうに微笑む守麗王はゆっくりと玉座についた。
「お世話になりました。」
リュナの言葉にあわせてカルサも頭を下げる。王の傍には沙更陣とジンロが位置していた。二人とも優しい表情で見ている。