光の風 〈聖地篇〉-22
「持っていけ。カルサと共に生きる為に。」
手の中の首飾りを見つめる。ジンロからの想い。リュナは優しさで心の中が満たされていくのを感じた。
「ジンロ様、ありがとうございます。」
まだ部屋の中で眠るカルサに想いを馳せる。応援をしてくれる人たちが居る、その幸せな事実にリュナは涙がでそうになった。
「リュナ、幸せになれ。お前たちは決して離れるな。」
リュナは頷き、手の中の首飾りを握りしめた。そして何度も頷いた。
押さえていた涙が溢れだした。自分の弱さや不安を分かって救ってくれた。
「力が弱いのが不安でした…。何故私の力は弱まったのでしょうか?」
ジンロは黙ったまま、答えなかった。答える前にリュナが続ける。
「ジンロ様、私は本当に風神なんでしょうか?」
切実な表情でジンロに答えを求める。そこまで考えてしまうほどリュナの力は衰えていた。
本当に黒の竜王フェスラの影響だけなのだろうか?もしも自分が風神でなかったら、カルサの傍にはいられなくなる。
「リュナ、きみは間違いなく風神だ。きみの力には先代の…環明の力を感じる。」
「たまきあけ…?」
聞き慣れない名前にリュナは不思議そうに見上げる。ジンロは頷き、リュナの頭を撫でた。
「きみと同じように強い心を持った優しい女性だった。懐かしい。」
きっと新たな思い出がよみがえったのだろう。リュナの向こうに昔を見ていた。
ジンロは目を現実に戻し、リュナを見る。
「例え風神でなくとも必要な存在だ。不安になる事があるならオレに言うといい。解消してやろう。」
そう言うとジンロはウィンクをしてみせた。その行動に思わずリュナは笑顔になる。
手の中の首飾りを握り、もう一度お礼を言った。
部屋で眠るカルサのもとに足を向けて歩きだした。
昨日よりも目に映るものは深く眩しく見える。
庭を歩き、水の流れ、風を感じて進む。リュナはふと思い出した。
あれからカルサは千羅との関係をリュナに話した。隠密にカルサをサポートする存在、いつでも傍に居ると明かしてくれた。
(もしかして…?)
「千羅さん…千羅さん居ますか?」
弱々しく空に話しかけた。もしかして、という思いで呼んでみたが空振りだったらしい。