光の風 〈聖地篇〉-21
起こしていないか確かめた後、カルサの額に軽くキスをし外に出ていった。
廊下に出て辺りを見回すと遠くで階段を降りようとしているジンロを見つける。
「ジンロ様!」
リュナは思わず呼び止めた。ジンロは優しくほほえみ立ち止まった。
「そういや、リュナとあまり話などしていないな。」
二人は中庭の大きな噴水の前を歩いていた。後ろに居るリュナに歩きながら話かける。
リュナは頷き答えた。噴水の脇にジンロは腰かけ、リュナを見る。
「カルサから話は聞いたか?」
「ジンロ様は太古の国の神官…古の民なんですね。」
ジンロの切り出しにリュナは乗った。昨晩、カルサが話してくれた事を思い出す。広がっていく人間関係。
「あぁ、そうだ。この因縁の始まりを聞いたのか?」
「一人の人間が生み出した、くだらない争いだと。そう聞きました。」
リュナの両手は前で組まれたまま、しっかりと握り締める。目はまっすぐにジンロに向けられていた。
ジンロは避ける事無くリュナの視線を受け入れた。
「あいつらしい。確かに…くだらない争いかもしれないが、状況はもっと複雑だ。一人の人間だけではこうはならない。」
ジンロは切なそうに笑う。一瞬の遠い目、しかし直ぐに戻り真剣な顔で語りだした。
「カルサが全てを語るには時間がかかるだろう。それだけに思い出したくない出来事だった。待っていてやってくれるか?」
ジンロの言葉にリュナは頷いた。優しい表情、彼女は本当にカルサを想ってくれているとジンロは確信した。
「リュナ、カルサを頼む。オレたちは皆あいつを守る為に必死だ。きみの存在は大きい。」
ジンロは首下をゆるめ、服のしたに隠していた首飾りを外した。しっかりと握り、息を吹きかけ祈りを捧げる。
「これは守護のまじないをかけてある。これをきみに。」
ジンロは立ち上がりリュナに差し出した。リュナはとまどい、首を横に振る。
「これはジンロ様の物、受け取れません。」
ジンロは微笑み、リュナの手を取り首飾りをのせた。リュナはとまどいながらジンロを見上げる。
「何故かきみの力は先代風使いよりはるかに弱い。」
その言葉にリュナの体は反応した。五大元素の力とはいえ、確かに彼女の力は弱かった。あの日、フェスラと接触した時から少しずつ力が弱まっている。
「これには守護の力がある。少しは力の足しにもなるだろう。」
ジンロはリュナの頭をぽんぽんと叩いた。全てわかっているかのような仕草、リュナの中に安心感が生まれる。